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聖なる夜に 9

 カーテンの隙間から漏れた朝日が眩しくて目覚めると、僕は裸のまま、宗吾さんの腕の中にすっぽり包まれていた。  人肌が……あたたかい。  今日は日曜日ということもあり、僕たち昨夜……長時間に亘り、求めあってしまった。正直に言うと途中から、よく覚えていない程だ。  彼と身体を重ねてから半年以上経ったが、一向に飽きることはない。  いや……飽きるとかハマるというレベルではく、彼と暮らす生活の一部に、夜の営み……身体を繋げることが含まれているようだ。  男同士……何も生み出さない営みなのに、不思議だが、彼を身体の中の迎え入れると、とても満たされた心地になる。  僕の心が……幸せだって喜んでくれる。  それにしても、昨日はどうにも不思議な感覚だった。 「夏樹……もう、いない?」  もう弟の気配は感じなかったが……冷静に考えると少し複雑な心地になった。  もしも昨日、夏樹が天国からここに来ていたとしたら、僕を見ていたとしたら……どう思っただろう?  お兄ちゃんは男なのに、男の人に抱かれていて、びっくりしたのでは。    あぁ、まだ5歳の夏樹には僕が何をしていたか、分からないはずだ。いや……それでも何かが変だと思っただろう。  宗吾さんが「天国から夏樹が降りて来ている」と言ってくれたので、ありえないことを現実のように考えてしまい、恥ずかしくて頭がパンクしそうになった。 「瑞樹、どうした? もぞもぞして」 「昨日の、見られてしまったかも……まずかったのでは」 「ん? 誰にだ?」 「弟に……天国からもしあの子がやってきていたのなら、驚かしてしまったのでは。そう思うと居たたまれません」  宗吾さんに素直に伝えると、髪をクシャッと撫でられた。 「瑞樹は心配症だな。そうだなぁ。確かに驚いたかもしれないが、夏樹くんのお兄ちゃんが幸せそうな顔をしているのも、見てもらえたはずだ」 「それは、そうですか……」 「あぁそうだよ。俺はさ……躰を重ね合うのは、単なる性的欲求だけでないと思っているが、違うか」 「あ、僕も今……同じことを思っていました。宗吾さんと繋がっていると、ここが満たされます。僕の衣食住の一部のようで、あなたに抱かれるのは自然なことなんです、もう……」 「そうだな。こんなに自然に溶け合えるなんて最高だ。男同士でしか味わえない極みかもしれないな」 「はい、宗吾さんに抱かれるのが、僕はとても好きです」  いつになく素直な朝だった。  僕の台詞に、宗吾さんの目が生き生きと輝き出した。 「瑞樹、ストレートな愛の告白、嬉しいよ。朝から、求めているのか」 「あ、いえ、そんなつもりでは」 「心が満たされていると、ストレスや心配を感じないだろう」 「はい! あの……でも……そろそろ服を着ませんか」 「もう一度、駄目か」 「あっ……」 「瑞樹の顔、よく見せてくれ」  両肩をシーツに抑え込まれ、キスをされた。いつもの朝のキスよりも、もっと濃厚なキスだった。口を開かされ、口腔内に舌をねじ込まれ、身体が震えた。 「ん……駄目ですよ。もう起きないと」 「まだ芽生は眠っているよ。俺たち、日曜日になのに平日と同じ時間に起きてしまったな。これって職業病かな」 「くすっ」 「だから、一仕事しないか」 「もうっ、仕事って……」  互いにまだ裸なので、くっつけば密着度が凄い。散々昨日シタのに、また身体が熱を帯びて来る。宗吾さんに深く腰を抱かれ……尻の狭間を探られてしまった。 「んっ──」  まだ寝起きの身体に触れられると、過敏に反応し過ぎてしまう。 「ここ、まだ湿っているな……このまま挿れられそうだ」  唐突に宗吾さんの指がつぷりと差し込まれたので、震えてしまった。朝から求めあうのは滅多にないので、恥ずかしい。寝室のカーテンを、しっかり閉めていなかったようで、灯りが一筋の線となって僕の身体を照らしていた。 「スタートラインみたいだな。ここ……いいか」 「……いい、ですよ」  僕も宗吾さんの首に手を回し、彼を優しく引き寄せた。 「ありがとう」  繋がる場所を露わにされ、朝日に照らされると、やはり羞恥に震えた。 「ん……それは、嫌っ……恥ずかしい」 「こうすると、よく見える」  剥き出しになった部分に、宗吾さんの先端が擦りつけられると、僕の蕾は従順に開いていく。宗吾さんに抱かれる度に、僕の身体はどんどん宗吾さんのサイズになっている気がする。 「……あ、……っつ、あっ」  探るように腰を動かされ、摺り上げられて震えてしまう。僕の感じるところばかり責められるので、声を出さないようにするのに必死だった。  くちゅくちゅと淫らな音と共に、宗吾さん自身を穿たれた。    両手を恋人繋ぎで顔の横に固定されて、宗吾さんのものを最奥で受け止めて、震えた。 「あっ、あぁっ──」 ****  早朝に深く繋がってしまい、ますます気怠い身体だったが、なんとか起きて一度シャワーを浴びた。 「瑞樹、さっぱりしたか」 「はい……少し怠いですが」  求めすぎです。でも……僕も気持ちよかったので、同罪ですね。  そんな気持ちを込めて彼を見つめると、彼も申し訳なさそうにしていた。 「ごめんな。朝日に照らされた君が可愛すぎた。ほらソファで少し休め。コーヒーだ」 「ありがとうございます」  コーヒーを受け取り、ソファに腰を下ろすと、昨日芽生くんがテレビを観たあとに書いた『サンタさんへの手紙』が置かれていた。 「あ、そうだ。あとで手紙を出しにいかないと」 「クリスマスだもんな。ところで芽生は、今年、何がご希望か」 「……何でしょう」 「チラッとみてくれ。それで、手伝ってくれ」  宗吾さんが小声で両手を顔の前で合わせて、頼んでくる。  くすっ、世の中のお父さんサンタも大変だ。  手紙を確認すると、覚えたてのたどたどしい平仮名で、サンタさんへの可愛いリクエストが書かれていた。 「わ……これは……宗吾さんには、難しいかも!」

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