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幸せな復讐 20
「瑞樹、身体を拭かないとな」
「ん……」
宗吾さんが大きなバスタオルで、僕を優しく包んでくれる。
いつも僕が芽生くんにしてあげることを、宗吾さんがしてくれる。それがくすぐったくて、心地よくて、くすっと笑ってしまった。
笑うとまた一つ、大切な思い出が戻ってきた。
「擽ったいか」
「あの……小さな頃、こうやって母が拭いてくれて、きまってそのまま擽られて……それで最後はぎゅうっと抱っこしてもらいました」
「ははっ、そうかそうか。君のお母さんは、なかなか活発な感じだよな」
「そうかもしれません。、あっ、や……そうくんまで、擽らないで」
宗吾さんが僕の脇腹をこちょこちょしてくるので、笑いを堪えるので大変だった。
「も、もうっ、芽生くんが起きてしまうから……駄目ですって」
「おっと、そうだったな」
今度はぎゅうっとバスタオルごと抱きしめられた。
「抱き心地いいな~瑞樹のお母さんも、君が可愛くて溜らなかったのだろうな。可愛すぎてちょっかいを出してしまうんだよ」
「あ……もうっ」
今度は豪快にバスタオルを剥がされて、一気にシーツの上に押し倒された。芽生くんの様子が気になったが、ぐっすり少し離れたお布団で眠っていた。
「瑞樹……ありがとうな」
「何をですか」
「今日の君を一部始終見ていたが、1 mmも揺らいでいなかった」
「当たり前です……宗吾さんと芽生くんと、今幸せだから見えて来たことはありましたが、今の僕が……僕は好きです。そうくん……あなたに出逢えて良かったです」
ブルッと宗吾さんが僕の上で震えた。
「あ、あの? 寒いですか」
「みずき~その『そうくん』呼びは俺の理性をぶっ飛ばす‼ 煽ったこと後悔すんなよ」
「あっ!」
いきなり獰猛な虎……いやクマに四肢を絡め捕られたような気分になった。
「あ……あっ……うっ」
感じやすい首筋から胸の突起にかけてのラインを、舌で何度も何度も辿られて……チュッとキツく吸われた。今度こそ痕がついたかも!
「瑞樹……もう一度、呼んでくれ」
「あ……そうくん?」
「それ、すごくいい。甘えてもらってる気がして、めちゃくちゃ可愛いな」
平らな胸を熱心に揉まれ、ウエストから臍のラインにも口づけを受ける。
全身を愛おしそうに愛撫され、僕の体もどんどん火照っていく。
「んっ……ん」
声を控えないと思うのに、鼻にかかった艶めかしい声が次々とあがってしまう。窓を全て閉めてもらってよかった。あとは芽生くんを起こさないように、声を抑えて……。
この先は……もうすべて委ねていく。明け渡していく。僕の体を宗吾さんに染め上げてもらう行為になる。
「感じているな」
「……あっ、や……」
宗吾さんの男らしい節のある指が、縦横無尽に駆け巡る。
巧みに扱かれた生まれた白濁のものが……幹を伝って腹を濡らす。僕……熟れた果実のようになってしまう。宗吾さんに食べられるのを待っている……期待している。
「泉のようだな」
「そんな風に言わないでください。はずかし……いです」
宗吾さんが前屈みになり、僕の幹から零れ落ちる蜜を掬っていく。
まるでわざと聞こえるかのように、ちゅっちゅっと音を立てるので、恥ずかしくなってしまうよ。
「……あっ、あっ……」
恐る恐る下腹部を見ると、宗吾さんと目が合った。
「芽生は寝ているよ……大丈夫だ、もっと感じてくれ」
「う……はい」
気持ち良すぎてずり上がってしまう体を引き止めら、足を大きく広げられた。
中心を見られるのが恥ずかしいのに、嬉しくて。
僕を丸ごと愛してくれる宗吾さんが、愛おしくて溜まらなくなる。
声はいつしか強請るように甘く響いていた。
身を委ねることに徹した。
僕自ら腰を揺すり宗吾さんを呼ぶと、宗吾さんの指が尻の狭間を割って、窄まりにやってきた。いつの間に準備したのか丹念にジェルを塗られ、指で解されていく。
我慢するのも切ない程、僕の体は宗吾さんを求めていた。
長く節張った指が沈められ、掻き混ぜられて……とろとろに溶けていく。
快楽を強く感じる部分を執拗に探られ、息も絶え絶えになっていく。
「そうくんが好き……もう、そうくんしか、見えない。そうくんに愛してもらえて……うれしい」
口から出てくるのは幼い子供のようなシンプルな言葉。
「ここで、抱く。俺が抱く」
まるで自分に言い聞かせるように宗吾さんが呟いた後、腰をガバッと勢いよく掲げられ、彼の指を咥えた部分がドクドクと脈打つのを感じた。
「もう……、もう挿れて……」
「あぁ!」
鼻先がぶつかるような激しいキスを交わし、蕩けた部分から指を抜かれ、代わりにズシッと質量のある大きなものを、一気に呑み込んだ。
「あ……んっ」
ググッと腰を進められるると圧迫感と愛おしさが重なって、快楽が生まれた。
「いい……すごい……」
「瑞樹の中、気持ちいい。一番居心地にいい場所だ。おれにとってかけがえのない存在だ」
「そうくん……そうくん!」
初めて抱かれた時と同じくらい、感情が昂ぶっていた。
宗吾さんのものを、最奥まで僕の体が受け入れている。
「おく……すごく……おく」
「あぉ、一番奥だ」
受け入れた部分から広がる熱に酔いしれる。
「瑞樹はおれのもんだ」
「はい……僕はいつもここにいます」
しっかりと体を重ねあわせて、大きく揺れていく。
僕は零れ落ちないように、宗吾さんにしっかり掴まった。
抜き差しされては最奥を穿つものに、翻弄されていく。
「も、もう――」
「俺も限界だ、一緒に」
「あ……っ、あっ」
「くっ!」
「ん……うっ」
熱く昂ぶったものが最奥で弾けた瞬間、満ちあふれる程の、多幸感に包まれた。
僕の一番奥にやってきてくれた宗吾さんを感じて、目を閉じた。
ずっと……幸せになる資格がないと、幸せから目をそらし、後ずさりしていた僕だった。
そんな僕が、大きな別れのあとに出逢った男性は、僕の生涯の人だった。
宗吾さんからの大らかな愛情、芽生くんからの親愛。
恋人として、家族として……陽だまりのような愛情を浴びて生きている。
愛に溢れた人生を歩みたいと、僕が思えるようになったのはふたりのお陰だ。
「ありがとう……そうくん」
「みずき、ありがとうな」
あとがき(不要な方はスルーで)
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『幸せな復讐』が、20話も続いています!
短編のようにすっきり終わればよいもの、名残惜しくてじっくり書いています。完結間近の本編ですので、ふたりのしっかりとしたラブシーンは、これで最後になるのかと思うと、しみじみとしてしまいました。なので、じっくり書きました! 初めて宗吾さんと繋がった時は、一馬の気配を感じながらでしたが、今回はもう宗吾さんに染め上げられていました。瑞樹も宗吾さんも……こんなに愛し合える人がいて良かったです。
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