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エピローグ
「綺麗に落ちて良かったわね」
「はい、ありがとうございました。助かりました」
汚れてしまったシミは、綺麗に落ちていた。
洗濯物からは、由布院に降り注ぐ太陽の匂いがした。
「また是非いらして下さいね、素敵なご家族の姿、見せて欲しいです」
「あ……はい! 季節を変えて来てみたいです」
「よかった。あの……ご縁を感じるんです。不思議なご縁を……突然、変なこと言ってごめんなさい」
「いえ、嬉しいです。僕もそう思っていました」
帰りは旅館の送迎バスに乗せてもらった。
さぁ、もう帰ろう!
僕たちの家へ。
いい旅だったなと、ぼんやりとしていると、芽生くんが教えてくれた。
「あ、お兄ちゃん。ハルトくんたちがバイバイしているよ~」
「本当だ!
「ボクたちもバイバイしよう」
「そうだね」
一馬が小さな春斗くんを抱っこして、手を振っていた。
笑顔で――!
僕と宗吾さんと芽生くんも、仲良く手を振った。
こんな関係があってもいい。
この先も……続けてもいい。
僕の気持ちは、結局ここに落ち着いた。
今の僕が『幸せな存在』に囲まれているから、思えたことだ。
「宗吾さん、いろいろありがとうございました
「瑞樹らしい決断に惚れ惚れしたよ。俺には出来ないことを君がしてくれる。それが心地よいんだ」
宗吾さんの言葉に、包まれていく。
「瑞樹……俺たち一緒に年を重ねて行こう。芽生の成長と共に、どんどん年を取っていくが、内面はいつまでも瑞々しく潤っていたいな。潤っていればさ、ひび割れないだろう。瑞々しいっていいことだ。俺は君の名前がとても好きだ」
「真っ直ぐでおおらかでリーダーシップのある宗吾さんだから、僕はもう怖くないです。僕が……僕らしく生きていけることが、幸せです」
人はひとりじゃない。
だれかの幸せな存在になれることにより、生きている意味を見つけ、幸せを感じていく。
「これからもよろしくな」
「はい! 僕のほうこそ」
僕たちの生活はまだまだ続く。
むしろ、これからが出発だ。
『幸せな存在』 完結
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