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夢から覚めても 1
「芽生くん、ぬいぐるみ抱いて眠ってしまいましたね。ニコニコで、可愛いですね」
「あぁ、きっと楽しい夢を見ているのだろうな。瑞樹、君もいい夢を見られそうか」
「……そうですね。宗吾さんの傍で眠れば……きっと」
「嬉しい誘いだな。じゃあキスの続きから始めようか」
キスにキスで応じているうちに、すっかり高まってしまった。
本当は『ゆめの国』があまりに素晴らしい場所だったので、少し不安だったんだ…現実世界に戻るのが。
でも、大丈夫だった。夢から覚めても、ほら、幸せな時間が続いている。
「今日の瑞樹、積極的でグッときたよ。車でのキスは印象的だった」
「あ……あの時はつい……。宗吾さん、僕だってちゃんとあなたを愛したいんです」
「嬉しいよ」
男同士だから思うこと? いや違う。
真剣に愛し合っているから、重なる思いなんだ。
『こころのトキメキ』は同じだけある。
与えてもらうだけではバランスが悪く、傾いてしまう。だから僕からも返していく。
宗吾さんが好きな気持ちを言葉にのせて、甘いキスにのせて、手と手を触れ合って、ぬくもりを分け合って……。
ベッドでゆったりとした気持ちで睦み合っていると、子供部屋から泣き声がした。
「ぐすっ……うっ、お兄ちゃん、どこぉ?」
「あ! 芽生くんが泣いています」
「行って見よう!」
子供部屋に行くと、ベッドに半身を起こした芽生くんがチェリーメイを抱きしめて、泣きべそを掻いていた。
「どうしたの? こわい夢を見ちゃったのかな?」
「よかった……おにいちゃんがこの家から、いなくなっちゃう夢をみたんだ」
「え?」
僕の方から溜らずに……ギュッと芽生くんを抱きしめた。どうしてそんな不安な夢を……今日は一緒に眠ってあげたらよかった。
「芽生は、ゆめの国が楽しすぎて、不安になったんだな」
「うん、
パパ、そうなの。あんまり楽しくて……ちょっとシンパイしちゃった」
「芽生くん、僕はずっとずっとここにいるよ」
「夢からさめてもいてくれてよかった」
芽生くんがほっとした表情で、スリスリとほっぺを擦り寄せてきた。
「お兄ちゃん……これからも、ずーっとそばにいてね」
「うん! もちろんだよ」
不謹慎だが、芽生くんに泣くほど求められているのが、嬉しくなってしまった。
胸の奥がキュンとする。
互いが互いの存在を大切に思える関係って、とても良いね。
****
次のにちよう日、パパとお兄ちゃんと、おばあちゃんちに行ったよ。
あーちゃんたちは、おばあちゃんちでくらしているんだよ。
「姉さん、退院おめでとうございます」
「美智さん、退院おめでとうございます」
「おばさん、あーちゃんどこにいるの?」
ボクはあーちゃんを早くだっこしたくて、うずうずしてる!
今日はだっこさせてもらえるかも! ボクね、いっぱいいっぱいレンシュウしたよ。チェリーメイをだっこしたり、もっとおもたいアザラシのぬいぐるみでもしたんだよ。
きっときっとうまくいく!
「あのね、『ゆねの国』のおみやげなんだ。あーちゃんに」
「わぁ……えっとこの子って、『ゆめの国』のキャラのポッフィー?」
「ううん、こっちは女の子で『チェリーメイ』だよ。ボクとおそろいにしたよ」
「まぁ『メイ』ってつくの? 可愛いわねぇ」
「でしょ! あとね、あーちゃんママとおばあちゃんにはクッキーをかってきたよ」
「まぁ、うれしい」
えへへ、やっぱりおかしを買ってセイカイだね。おにーちゃんの言ったとおりだ。お兄ちゃんとパパは、ボクがおみやげをわたす様子を、ニコニコしながら見ていてくれた。
「あとね、これはケンゴおじさんに」
「ん?」
ケンゴおじさんには、ボクのとっておきのガイドブックをわたしたよ。
気に入ってもらえるかなぁ、ドキドキするよ~。
「これは、何かな?」
「えっとね、おじさんがかっこよくなれる魔法のノートだよ」
「え?」
あーちゃんがよろこぶことがいっぱい書いてあるんだよ。のれる乗り物や、おトイレやごはんのこと……いっぱいしらべたよ。
「おじさん、あのね」
「わ! くすぐったいな」
「憲吾さん、芽生くん何か内緒話があるみたいよ。じっとしていて」
「お、おう。なんだ? 芽生……」
おじさんはとってもはずかしそうな顔をしていたよ。
「あのね、パパってなんでも知っていてカッコイイんだよ。でも、おじさんは『ゆめの国』はじめてだから、知らないことが沢山あるとおもって。あーちゃんがよろこびそうな場所とか、ここにかいたんだ」
おじさんはスケッチブックをゆっくりめくってくれた。
あれ? めがねの奥が、ぬれているよ。
「うっ、芽生、ありがとうな。これは最強の魔法アイテムだ。来年一緒に行こうな! その時は、カッコイイ私を見て欲しい」
「うん! フレー・フレー!だよ」
おじさんがんばって!
「芽生くん、彩芽が起きたみたい。抱っこしてみる?」
「え! いいの?」
「もちろんよ。早く抱っこしてもらいたかったのよ」
ボクはとってもドキドキしたよ。
「まだ首がすわっていないから、そっと置くね」
「うん!」
ソファにすわっておひざをそろえて、手でうけとめるかっこになったよ。
いっぱい練習したからね。
「わぁ……あーちゃん、小さい! かるい! かわいい!」
ボクのいとこのあーちゃん。
これからよろしくね。
ボクの妹みたいなあーちゃん、ダイスキだよ!
あとがき(不要な方はスルー)
****
今日は、ゆめの国の後日談になりました。
さて【推しの主要キャラ&サブキャラ投票アンケート】
本日9月12日24時が締め切りです。現在52票集まっています。ご興味あれば……今後の創作の糧にさせていただきますので、ぜひお気軽にご参加ください。こちらの頁に投票へのURLリンクがあります。他サイトです。https://estar.jp/users/159459565
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