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花びら雪舞う、北の故郷 24

「しゃむい……ほんとに、ここであっているの? おそらにちかいところって、ここでいいのかなぁ?」  ぼく、ちゃんとコートきているよ。    マフラーも、てぶくろもしているもん。  これならさむくないよ。  でもね、なんだかとってもさむいんだ。  パパが……なかなかきてくれないから。 「パパー、パパー、ぼく……ここだよぅ」  なんだか、さみしくなってきたよ。  なみだが、ぽろぽろ……ポロポロ……  ほっぺが、つめたいね。 「パパぁ……パパぁ……」  はやく、ぼくをみつけてよ。 「ぼくのパパ……」    ****  兄さんからの電話の後、菫さんと一緒に保育園前の公園にある小高い丘を駆け上がった。 「潤くん、本当にここなの?」 「兄さんが教えてくれたんだ! 俺もそう思うんだ。予感がする!」 「いっくんー どこだー?」  オレたちは丘の一番高い場所で、見つけた。  空に向かって伸ばされた、小さな……小さな手を。 「いっくん!!」 「あ……パパぁ……パパぁだぁ」  いっくんは芝生に座って、カタカタと寒そうに震えていた。    オレを見上げる両目から、大粒の涙を流していた。  そして俺を見つけると、小さな手を思いっきり上に伸ばした。 「パパぁ……よかったぁ。おそらから、きてくれて」 「いっくん!」    オレはサッと抱き上げ、思いっきり抱きしめてやった。  いっくんの温もりを感じ、重みを感じ、ようやく安堵した。 「パパぁ……パパッ、あいたかったよぅ」 「オレもだ」 「心配かけて……ママ、すごく心配したのよ。ひとりで保育園を飛び出すなんて、もうしちゃ駄目よ。いっくんに何かあったらママ……うっ、ううっ……」  安堵した菫さんが、その場で泣き崩れてしまった。 「菫さん!」  俺はいっくんを抱いたまま、菫さんも抱きしめた。 「ママ……ごめんなしゃい」 「いっくん、いっくん……」  俺は二人を抱きしめながら、決心した。  今だ――  今こそプロポーズする時だ!! 「菫さん、俺と結婚して下さい」 「えっ」 「空を見て!」    見上げれば軽井沢の空は、満天の星で埋め尽くされていた。 明るい星が多い冬の星空で、ひときわ目立つのは「オリオン座」だ。その「オリオン座」を出発点とし「冬の大三角」や「冬のダイヤモンド」を辿れば、他の星座や星も次々に見つかる。 「俺といっくんと菫さんは、夜空の星のように結ばれているように見えない?」 「じゅ……潤くん、いいの? 本当に……私でいいの?」 「菫さんだからだ。いっくんの父さんにもなりたい。そして……亡くなったご主人にも報告したい」 「あ……」  菫さんの瞳に、スーッと流れ星が飛び込んでいくように見えた。 「空を駆け抜いた人に……誓います! オレをいっくんのパパにさせて下さい。菫さんと一緒に生きていかせて下さい」 「じゅ……潤くん……ありがとう……うっ……ありがとう」 「菫さん、いい返事をもらえるか」 「いっくんは、まるだよ~」  泣きじゃくっていた、いっくんがニコニコ笑っていた。  それに釣られて、菫さんの顔にも、笑顔の花が咲く。   「くすっ、いっくんってば……潤くん……ありがとう。はい……私も潤くんと生きていきたい!」  真冬の寒さは、オレと菫さんといっくんの温もりで塗り替えられていく。 「ママ、パパとちゅーして」 「え?」 「けっこんって、ちゅーするんでしょ?」 「もう、いっくんってば!」  オレと菫さんは、目を合わせてコクンと頷いた。  それからいっくんのほっぺたにお互いキスをした。 「結婚には、いっくんもいっしょだよ。一緒に暮らそう!オレがパパになっていいか」 「わ、わぁ……パパもママも、だーいすき!」     あとがき(不要な方はスルーで) **** いつも読んで下さり、あたたかな反応と応援ありがとうございます。 昨日は更新をお休みさせていただきました。 ワクチン3回目の副反応でダウンしていました😭 でももう抜けた感じでホッとしています。 今日は潤たちにスポットを当てました。 潤……幸せを掴みましたね!  

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