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光の庭にて 1
「メイくん、また来てくれたんだね」
あれれ?
おふとんの中のボクをのぞきこむのは、パパとお兄ちゃんじゃなかったよ。
えっと、この人たちは……たしか……。
「あー! ルイさんとキシさんだ!」
「はは、だから俺はアーサーだって! まぁ愛する瑠衣を守る騎士《キシ》さんだけどね」
「アーサー、ちょっと子供相手に何を言っているの?」
わぁ~わぁ! これって、あの日見た、夢のつづきなのかな?
前に、お兄ちゃんには話したけど、イギリスに遊びに行く夢を見たんだ。
「メイくん、お久しぶり。君にずっと会いたかったよ」
ぬいぐるみみたいにふんわりと、ボクは綺麗なお兄さんにだっこしてもらったよ。
サラサラな黒髪がキレイ!
ルイさんって、ボクのお兄ちゃんみたいにやさしくて、キレイな人だなぁ。
「良かった……今度はちゃんと朝までいてくれたんだね。嬉しいよ」
「えー、やっぱりもう朝なの? はやくおきがえしないと……あ、でもボク、ここにはもってきてないよ」
「着替え? あぁ服なら、ちゃんとあるよ」
「アーサー、あの衣装がついに役立つ日が来たんだね。待っていて」
ルイさんがもってきてくれたのは、赤いバラのお洋服だったよ。
昨日着たのとまったく同じだったので、びっくり!
「あれ? これって」
「これは俺が君位の時にパーティーで着た洋服だよ。よかったら着てくれないか」
「でもぉ……とっても大切なおようふくなんでしょう? ボクが着てもいいの?」
あれれ? でももう昨日着ちゃったんだった!
「もちろんだよ。メイくんが着てくれたら嬉しいよ。さぁ僕に見せて」
「うん!」
なぜか涙ぐんでいるルイさんに見せてあげたくて、もう一度お洋服を着たよ。
「可愛い、可愛いよ! 小さな騎士だね。メイくんとってもカッコイイよ」
「えへへ」
「あーあ、瑠衣は坊やにメロメロだなぁ」
「あ……ごめん。だってアーサーの小さい頃も思い出してしまって……二重に可愛いんだ」
「そ、そうなのか」
うふふ、どっかで聞いたおしゃべりだなぁ~
****
「あれ? 芽生が寝ながらニヤニヤ笑っているぞ」
芽生くんの様子を見に行った宗吾さんが、呟いた。
「宗吾さんってば……芽生くんはいい夢を見ているんですよ、きっと」
「そういうもんか……人間って寝ながら、こんなに笑えるのか」
宗吾さんが顎に手をあてて真剣に考え込んでいる。
くすっ、そんなに悩むことですか。
「それを言うなら……宗吾さんだって、よくニヤニヤしていますよ」
「え? そ、そうなのか」
「くすっ、はい、昨日も夜中に目覚めたら……していました」
「なんだ。あれから起きたのか。疲れ果ててぐっすりだったのに」
「喉が渇いて……すみません。そ……その……全部お任せで」
「昨日も可愛かったよ。声も沢山聞かせてくれてありがとうな」
「え……えっと……」
「瑞樹、そんなに照れんなよ。ほら、おはようのキスをしよう」
……ん? もう朝なのかな?
パパとお兄ちゃんの声がする。
なんだか楽しそうだな。
ボクもまざりたいな!
「瑞樹……」
「あっ、はい……」
パチッと飛び起きてキョロキョロすると、お兄ちゃんとパパが『あちち』なのが見えたよ。
「あー! チュウだ!」
「わ! 芽生、起きたのか」
「め、芽生くん……」
お兄ちゃんってば、真っ赤っか!
「うん! おはよう! あのね、あのね……ボクとってもいい夢をみたんだよ」
「そうなの? どんな夢?」
「ええっと……なんだったかなぁ? イギリスのキシさんにあったような……」
「英国旅行の夢かな?」
「うん、昨日着たお洋服の夢だったよ」
よく覚えていないけれども、とてもしあわせな光の中で、笑っている人がいたよ。
今も昔も、日本も外国も……いつだって笑顔はいっしょなんだなって思ったよ。
****
ホテルで朝食を食べていると、潤家族が入ってきたのが見えた。
「あ……潤だ」
「あーあ、潤はしまりのない顔をしているな」
「くすっ」
潤はまだ眠そうないっくんを抱っこして、菫さんをさり気なくエスコートしていた。
素敵な一夜を過ごしたんだね。
菫さんと潤の雰囲気が一段と柔らかくなっていた。
愛し愛される関係に生まれるのも、また愛だ。
愛溢れる家族なのが、遠目にも伝わってきた。
いいね、潤。
大切にするんだよ。
菫さんといっくんは、かけがえのない家族なんだよ。
「潤は、しあわせオーラ全開だな」
「はい、あ……あそこにも……広樹兄さんたちが」
広樹兄さんとみっちゃんと優美ちゃんもやってきた。
「なぁ、広樹は髭剃らないのか」
「……もしかしたら、近々剃るかもそれませんよ」
「なんで分かる?」
ちゃんとは聞いていないが……兄さんは貫禄が出て年長者に見えるように、髭を生やしはじめた気がする。
全ては……父親がいない家庭だったから。
でももう必要ないよね。
くまさんという立派なお父さんがいるんだから。
「髭はくまさん……お父さんがいるから……もう不要かなって」
「あぁ、そうか……そういうことか。そうだな」
「それに、兄さんは髭があってもなくてもイケメンなんですよ」
ニコっと笑うと、宗吾さんが身悶えた。
「どうしました?」
「いや……手強いなって」
「手強いって?」
「君のブラコン熱、最近ますます高まってないか」
「あ……すみません」
「謝ることじゃないさ! 俺は別格だもんな」
ニカッと笑う宗吾さんの明るさに、今日も元気をもらう。
「パパ、おごりたかぶってはいけませんよ」
「え?」
「おばあちゃんの~」
「ウリウリだね!」
「そう!」
芽生くんと僕はハイタッチ。
ほらね、僕もこんなに明るくなったよ。
「あとはお父さんとお母さんの出待ちだなぁ」
「駄目ですって。そんなにキョロキョロ探したら……くまさんは恥ずかしがり屋かも……」
話していると、二人がやってきた。
くまさんとお母さんは、初々しくもあり、長年寄り添った夫婦のようでもあり、堂々としていて眩しかった。
「宗吾さん……僕の両親がいます。あそこに……」
「あぁ、いい光景だな」
あとがき(不要な方は飛ばして下さい)
****
『誓いの言葉』は終わりましたが、その続きの後日談を少し。
『幸せな存在』はこんなゆったりとしたペースが似合う物語かなっと。
未読の方には申し訳ありません。
アーサーと瑠衣は『ランドマーク』https://fujossy.jp/books/18238の主人公です。
洋服のエピソードは、他サイトですみませんが、こちらのエッセイにて昨日一昨日と小話として連載しています。
志生帆 海のエッセイ「しあわせやさん」https://estar.jp/novels/25768518
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