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HAPPY SUMMER CAMP!⑭

「宗吾さん、だ……ダメですってば!」 「うーん、もう少しだけ、俺、今、滅茶苦茶、瑞樹不足なんだよ」 「も、もうっ」 「夜は触れ合うの無理だろ」 「あ……あっ」  仰向けに押さえ込まれて深いキスを受け続けると、どんどん火照っていく。  僕もいやじゃないんだ。  素直になれば、宗吾さんに触れたかった。  だから彼の逞しい背中に手を伸ばし、ギュッと心を込めて抱きしめた。  そのまま目を閉じて、宗吾さんの激しいキスに素直に応じていく。  求められるがままに、僕を委ねていく。  テントの中は蒸し暑く、蝉の鳴き声が響き、子供たちの歓声が遠くに聞こえる。  こんな場所で白昼堂々唇を重ねているせいか、いつもより過敏に身体が反応してしまう。 「あっ……あっ」  狭いテントで宗吾さんと身体をぴったり密着させているので、彼が動く度に下半身同士が擦れて、むずむずしてきてしまう。どうしよう……っ! 「宗吾さん……どうしよう」 「ん……瑞樹、感じちゃったのか」 「そ……宗吾さんのせいですっ」 「ごめんな。だが俺もだ」 「あっ、いつの間に」 「これで瑞樹の好きな『一緒』だな」  いやいや、そういう一緒は、今は良くないです!  でも宗吾さんがニカッと笑うと、僕もつられて微笑んでしまう。  あぁ……僕は宗吾さんに相当弱いのは、もう認めよう。 「いっそ、一度出すか」 「え? ダメですって、いつ人が来るか分からない場所ですよ」 「うーん、だよな。後が大変だもんな。じゃ、もう少しだけキスしよう」 「んっ、あと少しだけですよ」  テントの中で睦み合うのって、ドキドキする。  そういえば小さい頃、テントで眠るのが好きだったな。  お父さんとの距離も、お母さんとの距離もぐっと近くなって、嬉しかった。  悪戯っ子の夏樹が僕の身体をくすぐって笑わせるから、テントが揺れて大変だったな。 「くすっ」 「瑞樹? 余裕だな」 「あ……んんっ」  宗吾さんが僕の身体を大きく撫で回してきたので、思わずしがみついてしまった。  彼の肩越しにテントを見ると、グラグラと揺れているように見えた。 「え……地震?」 「ん? どうした?」 「テントが激しく揺れているんです」 「地面は揺れていないぞ」 「で……ですよね」 「まさか‼」  僕と宗吾さんが同時に起き上がり、耳を澄ますと……  テントの外で、楽しそうな声がする。 「翠、これはやっぱりブラックキングのテントだぜ」 「くすっ、流はあの漫画好きだったもんな」 「こんな上手にテントの綻びを繕えるなんて、すごいな」 「流、そんなに揺さぶったら壊れちゃうよ」 「大丈夫さ。かなり頑丈なテントだ。翠、こっちに来いよ」 「あ……うん」 「このテントの陰に入れば、周りから見えないだろ」 「どういう意味?」 「こういう意味」 「あっ……ダメだって」 「ちょっとだけ、翠不足なんだ」  うわぁ……どっかで聞いた台詞だ! 「ん……んっ」 「翠……」  あああああ、まずい。これは絶対にまずい。  翠さんと流さんが深い仲なのは、その甘い雰囲気から察していたが、僕達がここにいるのに気付いたら、翠さんが卒倒しそうだ。 「あ、あのあの……宗吾さん……逃げましょう」 「瑞樹、静かに」 「でも……」    テントの向こうの声は、相変わらず筒抜けだ。 「やめられなくなる……翠の唇おいしすぎて」 「流……」 「テントに中に入ろう」 「え……でも」  えええ! それはまずい。絶対まずいって!  宗吾さんもここで鉢合わせは流石に気まずいらしく、珍しく焦っている。 「いいから、さぁ立って!」 「うん……」  ど、どうしよう!  テントの入り口に影か見えたので、目をギュッと瞑った。  そこに聞こえてきたのは、天の声。 「すいしゃーん、りゅーしゃーん」  いっくんの可愛い声だ!  その声に反応するように、テントの入り口を捲ろうとしていた手が、さっと離れた。 「ど、どうしたんだい? 芽生くんと潤くんまで一緒に」 「すみません。子供達が午後はキッズエリアのプールで遊びたいっていうので、芽生くんの水着を探しに来ました。それにしても兄さんたち、一体どこに行ったのかな?」  水着! 水着なら……  テントを見渡すと、芽生くんのリュックが転がっていた。  確か出掛けに、ここに水着を入れたはず。 「宗吾さん、僕、出ます!」  芽生くんのリュックを掴んで、僕は外に勢いよく飛び出した。 「わぁ! びっくりした」 「兄さん? そんなところで何をしていたんだ?」 「えっと、あの……芽生くんの水着の出番かなって……ちょうど取りに来ていたんだ」 「へぇ気が利くな、流石兄さんだ」 「お兄ちゃんありがとう」  芽生くんがピタッと足にくっついてきたのでドキッとしたが、先程の動揺で一気に萎えていたのでセーフだ! (ってこれ本当に僕の台詞?)  後ろめたい気分満載だったけれども、難を逃れてホッとした。  横を見ると、翠さんがいっくんを優しく抱き上げていた。  慣れた手つきだな。 「わぁ、いっくんはまだまだ軽いんだね。お日様の匂いがするよ」 「兄さん、俺にも抱っこさせて下さいよ」 「うん」  仲睦まじい兄弟の秘めたる恋。  僕はそっとそっと見守ろう。 「お兄ちゃん、早く水着に着替えたい」 「うんうん、テント……いや、コテージで着替えようか」 「うん。いっくんと一緒がいい!」    宗吾さんをテントに残し、僕達は再びテントに戻った。  ふぅ、サマーキャンプは、盛り沢山だな。  親子ピザ作りのあとは、すぐにキッズプールだなんて。  楽しいことばかりがぎゅっと濃縮された時間が過ぎていく。  幸せで満ち溢れ、楽しさで満ち溢れ……  眩しいほどの輝かしい時を過ごしている。  今の僕は、その全てを両手を広げて受け止めているんだ。 「お兄ちゃん、パパは?」 「うーん。ちょっと休憩中みたい」 「あ……お兄ちゃんはつかれない?」 「うん! 楽しくてワクワクしているよ」  芽生くんに聞かれて、子供みたいに答えてしまった。  でも、それが今の僕の素直な気持ちなんだ。 「やったー! お兄ちゃんが一緒にワクワクしてくれるの、うれしいな!」            

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