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Brand New Day 5

「めーくん」 「いっくん!」 「あいたかったよぅ」 「ボクもだよ!」  芽生くんといっくんが両手を繋いでジャンプ、ジャンプ!  再会を喜びあっていると、病院のスタッフから注意をされてしまった。 「すみません。お子さんは感染症の問題があるので、申し訳ないのですが……赤ちゃんが生まれた時は、特別に面会出来ますので、今は――」 「あ、申し訳ありません」  確かに、子供がはしゃぐ場所ではないね。  もっともな話だ。  それを聞いたいっくんがまたビクッと固まってしまった。  可哀相に……  この子はもっと小さい時から、大人の目を気にして生きて来たんだね。  でもね、もう大丈夫。  もう大丈夫だよ。  それを伝えてなくては――  言葉を選んでいるうちに、芽生くんがいっくんをギュッと抱き締めていた。 「いっくん、もうだいじょうぶだよ。こわくないよ。ボクたちがいるから」  僕の言いたかったことを、芽生くんがシンプルに伝えている姿に感動した。  一緒に見守っていた宗吾さんが、僕の肩を抱き寄せてくれた。 「瑞樹、ありがとう」 「どうして僕に?」 「芽生に優しさを植え付けてくれてありがとう」 「そんな……芽生くんの優しさに救われてきたのは僕の方です」 「じゃあ、相乗効果かな?」  場が和んだ所で、宗吾さんが素敵な提案をしてくれた。  「瑞樹、病院の向かい公園があったから行こう」 「今……公園ですか」 「公園なら、ピクニック出来るよな?」 「あっ、そうですね。いっくん、たぶん朝ごはんも食べていないような」 「それどころじゃなかったよな。じゃあ潤くんにメールしておいてくれ。心配するから」 「はい、そうします」  こういう時、牽引してくれる人がいるとチームの動きがスムーズだ。  チームにはリーダーが必要だ。  宗吾さんはそういう人。  僕を引っ張ってくれる人。 **** 「いっくん、芽生くん、さぁ、お庭に行くよ」 「わぁ、やったね!」 「めーくんといっしょにいく」  いっくん、すごくすごくうれちいよ。  いっくん、どこにいったらいいのか、わからなかったの。  パパにはママのところにいってほしかったけど、いっくんいるといけないから、いっくんどうしたらいいのか、わからなくて、ほんとうにこまってたの。  みーくんがだっこしてくれたときににね、おまじないをかけてくれたんだ。 『きみはひとりじゃないよ。みんないっくんがだいすきだよ』    いっくんにあいにきてくれたんだって。  いっくんにだよ!  うれちいなぁ。 「いっくん、さぁ、おにぎりをどうぞ。お腹空いてない?」 「あのね……いっくん、あさごはんなかったの」 「やっぱりそうだったんだね」  こうえんでおいしそうなおにぎりをパクッとたべたら、しょっぱかったよ。 「……これ、しょっぱいねぇ」  みーくんがいっくんのおめめをハンカチでそっとふいてくれたよ。 「いっくん、涙が……」 「いっくん、ないちゃった」 「我慢していたんだね。もう大丈夫。ここでは泣いていいんだよ」  みーくんがいっくんをぴょんって、おひざにのせてくれたよ。 「いっくん、がんばったね」  めーくんもおててをつないでくれる。 「いっくん、いい子だ」  そうくんがなでなでしてくれる。  いっくん、いつもおじゃまにならないように、いいこにしてないといけないっておもっていたんだ。  でもね……ほんとはね、すごくすごくこわかったの。 「いっくん、話してごらん。心の中で思ったことを話すと、気持ちが軽くなるよ」  ギュッとだっこしてもらったよ。  あ……おはなのかおりがするよ。  ママみたいに、やさしいかおりだね。 「あのね……あさおきたらね、ママがねにゅういんするって……いっくんね、パジャマびしょびしょだったの。きもちわるかったの。でもね……だれもきづいてくれなかったの」 「そうか……それは寂しかったね」 「でもいっくん、じぶんでぬげたよ」 「それは偉かったね。いっくんすごいよ」 「ほんと? いっくん、がんばったよ。ちゃんとこのズボンもはけたもん」 「うんうん、カッコいいよ」 「えへへ」  わぁ、なんだかこころがぽっかぽっかになってきたよ。 「いっくんね……ぽんぽんすいてるの。もっと、もっとたべたいな」 「もちろんだ。沢山食べていいんだよ」 「あのね、あとふたつほちい」 「ん?」 「パパとママにもあげたいの」 「そうだね。きっともうすぐ連絡が来るよ。もうすぐ会えるよ」 「いっくん、はやくあいたいなぁ」  いっくん、いろんなことばがでてきちゃう。  こまらせないかな?  ちらっとみると、みーくんはにっこりしてくれたよ。  そうくんも、よろこんでいた。 「いっくん、みんないっくんのことが大好きだから、いっくんの気持ちをもっと教えてくれ」 「ほんと? だめじゃないの? いっくん、こまらせない?」 「当たり前だよ。いっくんは潤と菫さんの大事な子供だ」 「わぁ……じゃあ……いっくん、これからは、ちゃんというね」 「そうだよ。我慢はよくないよ」  すごく、すごくほっとしたよ。  おなかもいっぱいだよ。  あぁ、よかった。  ほっとしたらあそびたくなったよ。 「いっくん、こうえんで……ちょっとあそびたい」 「いっくん、あそぼう!」 「めーくん! いいの?」 「サッカーボールもってきたよ。一緒にあーそーぼ!」 「うん!」  めーくんのボール。  いっぱい、かしてもらえたよ。  いっくんパパにとっくんしてもらったんだよ。  めーくんとあそびたくて!  ゆめかなったよー!  うれちいよ!  

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