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Brand New Day 15

旅行中で更新を4日間していなかったので、fujossyさんに集中転載して遅れを取り戻せました。今日2023/08/09の更新でエブリスタの最新話と追いつきました。 また同時更新していきますので、またよかったら宜しくお願いします。 **** 「潤、瑞樹、兄ちゃんが来たぞー!」  驚いたことに、潤と僕を一纏めにガバッと抱擁したのは、函館にいるはずの広樹兄さんだった。  兄さんの逞しい腕と顎の短い髭のくすぐったさに、これは夢ではなく現実だと実感する。 「に、兄さん、一体どうして?」 「実は急遽母さんに交替してもらったのさ。潤が二児の父になった顔と瑞樹の頑張った顔を、どうしても……この目で見たくてたまらなくなって」  僕は不思議なことに、今日、兄さんのことばかり思い出していた。兄さんに食べてもらいたくて、思い出のカップケーキを買ってしまうほどに。 「兄さん……お兄ちゃん……すごく会いたかったよ」 「瑞樹、俺も会いたかったよ!」  つい甘ったれた言い方になってしまう。  昔から広樹兄さんは、僕を甘やかしてくれた。  それが懐かしくて、つい。 「俺、今日はどうしても来たくて……来て良かったよ」  あれ? 広樹兄さん、今日は少し感じが違う。  もしかして、くまのお父さんのおかげなのかな?  そうか、今日は……兄さんがしたいことを出来ているのか。  兄さんが嬉しそうだと、僕の心もポカポカになるよ。  いつも休む間もなく働いていているので、なかなか会えない兄さんが、軽井沢に単身で来てくれた。  会いたいから、会いに来てくれたなんて、嬉しいよ。  だから僕の方からも、甘えて抱きついてしまう。 「お兄ちゃん、お兄ちゃんが会いたいと思って、来てくれて嬉しい」 「どうした?」 「お兄ちゃんがしたいこと出来ているのが嬉しいんだ! 今までもこれからもありがとう」    今日だから、今だから言えるありがとうを届けたい。   「瑞樹、よしよし、元気そうだな。幸せそうだな」 「宗吾さんと芽生くんに幸せにしてもらっているから……そう見えるんだよ」  これも自信を持って言えること。  毎日生きていると、想像もしなかった事に遭遇する。  良い事も、悪いことも半々にやってくる。  でも基盤がしっかりしていたら、どちらもフラットにしていける。  基盤は愛だ。  人を愛せる心の柔軟さ。  人に愛される素直な心。  どちらも大切なことだ。  亡き母の言葉を思い出す。 …… 「可愛い瑞樹、ねぇ、ずっと可愛げのある人でいてね。成長するといろんなことがあると思うけど、素直なのが一番よ。嬉しかったら笑って、悲しかったり泣いていいのよ。素直で優しい人の周りには、人が集まってくるわ」 ……  母がいなくなってから、なかなか素直になれなかった。控えめになることで心をガードして、心は閉ざしてばかりだった。  そんな僕が、宗吾さんと芽生くんと出逢って変化した。  宗吾さんの直球の愛を受け、芽生くんから素直な愛情を分けてもらい、母との約束を再び思い出せた。 「瑞樹、よかったな」 「はい、宗吾さん」 「お兄ちゃん、よかったね」 「うん、芽生くん、ありがとう」  この二人はいつも僕の幸せを願い、喜んでくれる。  だから僕も愛してる。 「むにゃむにゃ……むにゃ」   そこで潤の腕の中の、いっくんが目覚めたようだ。 「お、いっくんおはよう!」 「パパぁ、もう……あさでしゅか」 「いや、まだ夜だよ」 「んん……なんだかここ、キラキラあかるいでしゅよ」 「いっくんのごほうびが届いたからな」  潤がいっくんを抱き直しキラキラした世界を見せてやると、広樹兄さんとお父さんが肩を並べ和やかに笑っていた。 「広樹、来て良かったな」 「はい、お父さんの言う通り……だったよ」 「そうそう、その調子だ。もっと砕けろ、甘えろよ」 「う……がんばります」 「ははは!」  広樹兄さんとお父さんは、まるで最初から親子だったように馴染んでいる。  とても素敵な光景だね。  ずっと見たかったよ、兄さんが誰かに甘えている姿を。 「あー おじいちゃんだ! ひろくんもいる」 「いっくん、何をお願いしてくれたの?」 「みーくん、あのね……」  僕はどうしても聞いてみたくなった。  すると、いっくんが教えてくれた。  とてもシンプルな願いごとを―― 「あのね、あいたいひとがあえますよーにだよ。いっくんね、おとうとにあえたからうれしくって、みんなも、あいたいひとにあえましゅよーにって、おそらのパパにおねがいしちゃった」  いっくんが小さな手を大きく広げて、目を輝かせてジェスチャーで教えてくれる。  あぁ、君はやっぱり天使だ。    僕が会いたい人を連れてきてくれた。  それは潤も同じだ。潤にとってもくまさんはお父さんで、広樹兄さんは大事なお兄さんだ。 「会いたい人が会いたい人に会えるって最高だ。いっくんお願いごとしてくれて、ありがとう」 「うふふ、パパ、ニコニコうれちい! あーパパのおひげくちゅぐたい~」  いっくんも起きたので、皆でカップケーキを食べることにした。  広樹兄さんも菫の花びらがのったカップケーキを食い入るように見てた。 「兄さん、あの日はありがとう。僕、甘いものが大好きなのを知っていたから、食べずに持って帰ってきてくれて」 「瑞樹に笑って欲しくてな」 「うん、自然と頬が緩んだよ」 「今日もな」  広樹兄さんに頬を優しく撫でられた。 「幸せな顔になったな」 「毎日、宗吾さんと芽生くんに幸せにしてもらっているので」 「俺も瑞樹には幸せにしてもらっているよ」 「兄さん? 僕は……何も出来てないよ」 「いや、カップケーキが縁でみっちゃんとの距離がぐっと近づいたのさ。だから俺の中じゃ瑞樹が恋のキューピットだ」  兄さんはいつもすごい。  こうやって僕の気持ちをどんどん上げてくれる。  僕を生かしてくれた人、それが広樹兄さんだ。 「お兄ちゃんの役に立てたの? 嬉しいよ」  潤の家には、今宵、アパートの床が抜けそうなほどの人数が集まった。 「そろそろ眠るか」 「狭いな」 「キャンプみたいですね」 「くっついたらなんとかなるって!」  客布団を出し三枚の敷き布団に、大人五人と子供二人が川の字だ。  おしくらまんじゅうみたいにギュウギュウで可笑しかった。  でも、やっぱり危ないので、芽生くんといっくんは座布団の上に避難。  残りの人たちは、くっつき合って眠りについた。  持ち寄った幸せを広げて――

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