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ムーンライト・セレナーデ 32(月影寺の夏休み編)

前置き(不要な方は飛ばして下さい) **** 32話、一ヶ月に渡り連載した『重なる月』と『幸せな存在』の夏休みspecialのクロスオーバーも今日でラストになります。最終話も楽しんでいただけると嬉しいです。途中、流行病に感染してしまい体調不良の日も多かったのですが、楽しい夏休みの話を全話、無事に書き終えてほっとしています。この先は、またそれぞれの話に戻る予定です。 今後の創作についてアンケートを取っていますので、よかったらご参加下さい。他のサイトで申し訳ないです。https://estar.jp/comments/64593551 それではクロスオーバー最終話です。 **** 「白江さん、今日はいつもより大人しかったですね」 「まぁ! 桂人さんってば言うわね」 「くくっ、それにしても、いつものお転婆さんはどこへ?」  帰り道、桂人さんに揶揄われて、笑みが漏れた。 「今日の主役は男性だったから、私は観覧席から楽しんでいたのよ」 「ふっ、確かに月影寺の結界は強力でしたね。おれにもビシバシ感じましたよ」 「だから洋ちゃんも、心から寛いでのびのびとしていられるのね。周りの人達も幸せだから、認め合って、守り合っているのね」  そう言えば……海里先生と柊一さんが生きていた頃、冬郷家の白薔薇の庭でお月見をしたことがあったわ。瑠衣さんのお里帰りに合わせてだったわね。  私が彼らのために『ムーンライトセレナーデ』を歌うと、麗しいカップルたちは、ゆったりと身体を揺らしてダンスを披露してくれた。  海里先生にリードされる柊一さんは気品があって素敵だったわ。  アーサーと瑠衣は流石、英国仕込み。まるで舞踏会の舞台に立っているように堂々としていた。アーサーさんのリードで軽やかに舞う瑠衣さんは愛らしかった。 「あの時、桂人……あなたもいたわよね」 「えぇ『ムーンライトセレナーデ』は白江さんに教えていただいた曲ですよ」 「ふふっ、だからなのね」 「その通りです。月夜に似合う選曲です」 「素敵だったわよ。あの日の私のように洋ちゃんが歌ってくれたわ」 「彼の歌声は最高だった。切なく哀愁が漂うが、それだけでなく、凜としていた」  桂人さんに孫の歌声を褒められて、嬉しかった。 「ねぇ……私は……あとどの位、ちゃんと一緒にいられるかしら」 「……人の寿命は分かりませんよ」 「そうよね。だからこそ会える時には、会いたい時には、会っておきたいわ」 「今度は白猫と洋さんが来訪してくれますよ」 「うふふ、そうなの! 帰り際に次の約束をしちゃったわ。だってまたすぐに会いたいのですもの! 私、少し強引だったかしら?」  すると桂人さんが運転席で、くくっと肩を揺らした。 「いいえ、それでこそ、白江さんです!」 ****  帯を解かれ、左右に浴衣を開かれた。  宗吾さんの喉がゴクリと鳴る。 「瑞樹……とても綺麗だ」 「あ、あまり見ないで下さい」 「どうして? こんなに綺麗な身体なのに?」  障子を通して月明かりが僕の身体を淡く照らしている。  まるで素肌が白く発光しているようで、恥ずかしい。  目が慣れてくると身体の隅々まで丸見えで、もちろん僕に跨がる宗吾さんの逞しい身体も丸見えで……ううっ、目のやり場に困るよ。 「浴衣を借りて正解だな」 「どうしてですか」 「脱がせやすい」 「もうっ」  ちらっと横を見ると、芽生くんはすやすやと寝息を立て、ぐっすりと眠っていた。 「起きないでしょうか」 「大丈夫だよ。今日はかなり疲れているから、朝まで起きないよ」 「最大限、声を控える努力をします」  そう言うと、宗吾さんに唇を塞がれた。 「んっ」 「瑞樹、いつもありがとう、ずっと君を愛していくよ」 「宗吾さん……」  僕の方からも宗吾さんの逞しい背中に手を回した。すると宗吾さんが身体を下にずらし、僕の胸の尖りを舌先で丹念に舐めてきた。 「あっ……んっ、んっ……」    コリコリになった乳首を舌で転がされ、指でクニクニと押しつぶされ、乳輪をすっぽり口に含まれて赤ちゃんのように吸われると、何とも言えない気持ち良さが身体中を駆け巡った。  慌てて口元を手で塞いでも、小さく漏れてしまう嬌声。 「あっ……あ……」  どうして僕は……ここがこんなに気持ち良いのか。  男の平らな胸なのに、宗吾さんに触れてもらえると嬉しくなる。気持ち良くなる。  男だからとか女だからとかは関係なく、愛している人からの愛撫で、人は感じるように出来ているのだ。  人が愛し合う行為は、とても神聖な儀式なんだ。  月光に照らされた静かな逢瀬に思うこと。  好きだから触れたくなる。  好きだから触れて欲しい。  心も体も同じように――  抱いて抱かれて人は愛を紡ぐ。 「瑞樹、今日はいつもより感じやすいな。こんなに震えて、身体も赤く染めて」  気がつけば宗吾さんに握られた部分は甘い蜜を滴らせ、ぐっしょりと濡れていた。 「……そうかもしれません。宗吾さんを全身で感じたくて、心を研ぎ澄ましているので」 「俺もだ。月明かりに照らされた逢瀬は厳かで、気が引きしまるよ。男同士で繋がることの大切さを、この寺が教えてくれているようだ」 「僕も同じ気持ちです。潤のところのように赤ちゃんはやってきませんが……愛し合うということは、大切な行為です」 「その通りだ。俺たちにとって大切なことだよ」  宗吾さんの指が奥の窄まりにつぷっと侵入してくる。  中の具合を伺うように慎重に潜り込んでくる。  あの日から何度迎え入れたか分からないほど、抱かれた。    その度に満たされ、そしてまた来て欲しくなる場所がある。    人って不思議だ。 「きっと他の部屋でも、皆、同じことを……?」 「だろうな。ナイトピクニックのおかげでいいムードになった」 「愛の寺ですね。月影寺は」 「あぁ、だから俺たちも一つになろう」 「はい……もう大丈夫です。もう挿れても」 「もう少し足を広げられるか」 「はい」  自分から腰を浮かし、足をそろりと開いた。  だが……何度しても恥ずかしく躊躇ってしまう。 「恥じらう君にそそられるよ。もう少し開いてくれ」  宗吾さんの大きな手に太股を掴まれ、グイッと左右に開かれた。 「あっ……あぁ……あっ、うっ」  そこからずんっと質量のあるものを身体の中に受け入れて、押し開かれていく。僕の中に宗吾さんを迎え入れると、とても熱かった。 「すごく……熱いです」 「君を想う熱だよ、沸騰してる!」 「……はい」 「動いてもいいか」 「はい」  舟を漕ぐように、宗吾さんが最初はゆっくりと腰を揺らした。  僕も一緒に身体を揺らしてみた。  一緒に進んでいきたいから。 「あっ……いい……そこ……」 「ここか」 「うっ」  気持ち良かった。  心を解放して受け入れる行為は、僕を自由にしてくれる。 「瑞樹……好きだよ」  宗吾さんが僕に覆い被さり、何度も何度も耳元で囁いてくれる。  僕は彼の広い背中に手を回し、ありったけの愛を伝えた。 「僕も大好きです」  この広い世界で、僕は宗吾さんと出逢えて幸せだ。  この広い世界に、僕の居場所を作ってくれた人。  やがて……夏が過ぎ秋がやってくる。    そして冬、春と季節が巡っていく。  どの季節もあなたの腕の中で迎えたい。  僕は宗吾さんの腕の中で咲く花でありたい。 ****  そして翌日、それぞれの場所に戻っていく時間がやってきた。  月影寺の山門には、別れを惜しむ声が響いていた。 「めーくん、いっくん、かえりたくないよぅ」 「いっくん! ボクもだよ!」  芽生くんといっくんが、恒例のようにガシッと抱き合っている。 「ぐすっ、いっくん、さみしいよぅ」 「ボクもだよ」  その様子を、大人達が和やかに見守っている。 「また会えるよ、いや、また会おう!」 「パパぁ、ほんと? ほんとうに?」 「あぁ、本当だ。会おうという気持ちを持ち続けていれば、必ずまた会えるさ」  潤、すっかり父親らしくなって――  頼もしい声に、いっくんの涙も止まった。  僕もそうするよ。  前を向いて顔を上げて生きていこう。  会いたい人にまた会うためにも。 「兄さん、今回は誘ってくれてありがとう。これからも元気に明るく健康に過ごしてくれよ」 「うん、なんだか……潤の方がお兄さんみたいだね」 「いや、兄さんは兄さんだよ! オレの永遠の兄さんだ」 「潤……ありがとう!」  この三日間子供だけでなく、大人も様々な体験をさせてもらった。 「いっくん、かえったらおえかきするよ。すいしゃんにおてがみもかくんだ」 「ボクの絵日記もバッチリだよ」  そこに住職と流さんのお出ましだ。 「また是非いらして下さい。月影寺はいつでもあなたたちを歓迎します」 「翠さん、流さん、お世話になりました」 「瑞樹くん、洋と仲良くしてくれてありがとう」 「はい! 洋くんは心友ですから」  胸を張って言うと、傍らに立っていた洋くんが泣きそうな顔をした。  分かるよ、僕も同じ気持ちだから。 「洋くん、また会おう! いつでも声をかけて、僕もかけるから」 「ありがとう。遊びに来てくれて……本当にありがとう!」  洋くんからの抱擁。    ふと、洋くんの胸元に散らばる花弁を見つけ、照れ臭くも嬉しくなる。  洋くんも愛し愛されたんだね。  僕もだよ。 「あ……瑞樹くん、ボタンもう一つ留めた方がいいよ」 「え?」  僕の首筋のキスマークを見つけた洋くんにそっと囁かれ、真っ赤になった。  昨日は羽目を外しすぎた。    ここが居心地良すぎて―― 「瑞樹くん、また『ムーンライトセレナーデ』を一緒に」  それが、これからの僕らの合言葉。  交流を深め、親睦を深め、絆を深める心の鍵となる。

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