1571 / 1738

HAPPY HOLIDAYS 13

 大きな地震が発生しました。  本当に心配です。  皆様のご無事を祈っております。    そんな中ですが……創作は平常運転させていただきます。少しでも心が落ち着きますように……    改めまして新年の挨拶を……  あけまして、おめでとうございます。  今年も滝沢ファミリーを見守っていただけたら嬉しいです。 新年なので短い内容ですが、私も一日に一度は彼らに会いたくなるので、書いてしまいます。よかったら読んで下さい💞  以下本文です。 ****  12月に入ってから今日まで、僕の仕事はずっとピークだった。  早朝出勤して社内業務をこなし、午後は打ち合わせや現場立会い、夜は人手不足からショーウィンドーのディスプレイ作業の助っ人に入り、もうヘトヘトだ。  そんな多忙の日々でもなんとかやってこなせたのは、僕がもうひとりじゃないから。  僕には、ほっと寛げる家がある。  疲れた心と体を温めてくれる家族がいる。  仕事に集中して迎えた大晦日。    もう23時をとっくに過ぎていた。 「葉山さん、最終チェックをお願いします」 「はい!」  表参道の駅近く。  商業施設の新春の装花を隈なく慎重に確認してから、OKを出した。  人が行き交う場所なので、とても気を遣う仕事だ。 「ふぅ、チェックありがとうございます。あとは片付けておきますので、お疲れ様でした」 「ありがとう、いいのかな?」 「はい、俺たち体力には自信がありますので、任せて下さい」 「じゃあ、お言葉に甘えて」 「そうだ、やっぱり葉山さんもお正月は故郷で過ごされるんですか」 「うん、今年は帰るよ」 「楽しんで来て下さい」 「ありがとう」  ふるさとか。  僕は、故郷に帰省する。  明日の午前中、飛行機に乗って両親に会いに行く。  そう思うと、グンと元気が出た。  今から帰れば、年内に家に戻れるかな?  そう思って駅に行くと、人、人、人でごった返していた。  なるほど、もうすぐ年が明けるから新年の初詣客が集まっているのか。  ここは森永神宮が近いから。  流れに逆らうように満員電車に乗った。  僕は人混みが苦手なので、息が苦しくなってしまう。  ギュウギュウの満員電車で、見知らぬ人と至近距離になるのは正直まだ苦手だ。  予定ではすんなり帰れたらギリギリ間に合うはずだったが、ホームで電車を1本見送ったせいで間に合わなさそうだ。  少しだけがっかりした。  年を越す前に、宗吾さんと芽生くんに会いたかったな。  悲しい気持ちは僕の疲れた身体に負担になっていく。  疲れていると駄目だな。  心に余裕がないと、心が沈んでいくのを制御できない。  最寄り駅の改札に辿り着いたのは、23時53分。  走っても間に合わないと分かった時、僕は脱力して、しゃがみこんでしまった。  疲れが一気に押し寄せてくる。  帰らなくては……  気持ちを振り絞り顔をあげると、そこには……  なんと、宗吾さんが立っていた。  真っ直ぐ、僕に向かって手を差し出してくれる。 「瑞樹、お疲れさん! 「えっ、宗吾さん、どうして? 芽生くんは?」 「今日は母さんの所にいるよ。俺たちも今日は実家に泊まろう。明日は朝早いし、そのまま旅立てるようにしてきたから。君はとにかく何も考えずに早く休め」  宗吾さんはずるい。  かっこ良すぎる。 「なぁ、これは今年最後の見せ場なんだ。感動してくれよ」 「くすっ、はい、感動しました。いつも、いつだって……僕の心を支えて拾って持ち上げてくれる人です」  歩き出すと、ほっとしたのか、ふらりとよろけてしまった。 「おっと、やっぱり、もうヘトヘトだな」  人通りの少ない道になった途端、宗吾さんがスッとしゃがんで広い背中に乗れと言ってくれた。 「みーくんを迎えにきたんだ。ここに乗れよ」 「そうくん……」 「今日は素直に甘えて欲しい」 「……はい」  僕は幼い子供のように宗吾さんにおんぶしてもらった。  お父さんの広い背中を思い出す。 「お、そろそろだな」 「あ、年越しですね」 「今年は俺の背中の上で年越しか」 「……恥ずかしいです」 「それだけ?」 「えっと……嬉しいです」 「そうだろ!」  遠くに除夜の鐘が聞こえてくる。  宗吾さんが立ち止まって、公園の時計を見上げた。 「あと30秒だ」 「あっ、ここって……」 「この公園は、俺と瑞樹が出会った場所だよ。俺が君を見初めた地点だ」  そうか、ここは幼稚園のバス停があった場所だ。あの公園で出会った翌日、ここで宗吾さんに話しかけられた。  懐かしく振り返ると、あの日の光景が鮮明に浮かんでくる。  宗吾さんのこと、かなり年上だと思った。  今とヘアスタイルも全然違って、僕よりずっと大人の男性だと。  そんな宗吾さんと時を重ね、身体を重ねるようになって数年。僕たちの距離は今、とても近い。 「宗吾さんの演出は、いつも素敵過ぎます」 「ありがとう。よし、ここで年を越そう。そろそろカウントダウンだ」 「はい」 「5、4、3、2、1、瑞樹、あけましておめでとう!」 「宗吾さん、あけましておめでとうございます。今年も1年間宜しくお願いします」 「あぁ、今年も来年もずっと一緒だ。ところで背中に君を乗せて年を越すのは、縁起がいいな」 「そうでしょうか……僕は恥ずかしいですが」 「今年も『いつもいっしょ』を身体で表現しているよな」 「そうですね。いつもいっしょって、いい言葉です」  優しい言葉がいい。  難しい言葉では、心が迷子になってしまうから。  ただ好きだと、ただ一緒にいたいと、ストレートに言ってもらえるのが幸せだ。  あけましておめでとう!  僕らの2024年が今から始まる。

ともだちにシェアしよう!