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HAPPY HOLIDAYS 22

 風呂上がりの芽生の髪を、瑞樹の代わりにドライヤーで乾かしてやった。   「パパ~ そんなに髪を引っ張ったら、いたいよ」 「おっと、悪い。そーっと、やさしくだな」  瑞樹のようなきめ細やかさに欠けるのは、反省だ。    瑞樹の手つきを思い出して優しく手で髪を梳いてやると、芽生が目をゴシゴシと擦りだした。    もう限界か。  幼い頃から、分かりやすい眠たいサインだ。  時計を見ると、もう21時を回っていた。  今日は1日中、元気に明るくお父さんと遊んでいた。  雪だるまを作ったり、一緒にホワイトシチューを作ったり、率先して手伝って偉かったな。  よし、そろそろ寝かすか。 「芽生、もう眠るか」 「うん、ねむたい……」 「沢山遊んだもんな」 「あ、でもぉ……お兄ちゃんは大丈夫かな? ボクたちがついていなくても……」 「今日はお母さんがいるから、大丈夫だ」 「そっかぁ、お兄ちゃん、お父さんとお母さんに会えてほっとしたんだね。ボクにもその気持ちよーく分かるよ」  芽生も具合が悪い時、瑞樹がいるとほっとした様子でよく眠る。    自分で体感したことは、理解しやすいようだ。  芽生にはこれからもいろんな体験、経験をして欲しい。  良いことも悪いことも、積極的に心を動かすことによって、心は鍛えられる。 「よーし、今日はパパの添い寝だ」 「えー ボクもう3年生だよ。ひとりで眠れるよ」 「遠慮するなって! ここに泊まるのは初めてなんだし」 「えー はずかしいよー」  至って健全な反応だ。  芽生、順調にすくすく成長しているんだな。 「瑞樹にはしてもらうのに?」 「だって、お兄ちゃんは特別だもん」 「確かに!」  そりゃそうだと思っていると、お父さんがやってきた。 「おっ、二人とももう眠るのか」 「はい、あの……瑞樹は?」 「今日はさっちゃんがつきっきりだから大丈夫だよ。さっちゃんもようやくゆっくり看病できると喜んでいるから、全部任せよう。ってことで、俺のベッドにみーくんを寝かせたから、俺は宗吾くんたちと同じ部屋で眠ってもいいか」 「ははっ、もちろんですよ。俺、寝相悪いので覚悟して下さい」 「ははっ、俺もだ」 「わー ボク、つぶされちゃうかも」  和気藹々。    そんなやりとりをしながら、ログハウスの2階に上がった。  右手はお父さんが山岳フォトグラファー『Nitay』として活動するための仕事部屋、つまり写真の現像室がある。 「こっちが君たちの部屋だ」  左手の部屋を明けると、以前見た時とは様変わりしていた。 「あれ?」  大きな窓にかかるクローバー色のカーテンは変わりなかったが、壁一面に飾られていた幼い瑞樹のパネルや家族のパネルはなく、代わりに今の俺たちの写真が飾られていた。  瑞樹と俺と芽生。  広樹とみっちゃんと優美ちゃん。  潤とすみれさんといっくんと槙くん。  みんな家族だ。  みんな笑顔だ。 「模様替えをされたのですね」 「……そうだな。以前の写真は現像室の方に移したよ。心の扉にしまって、今を大切にしたくてな」 「分かります。俺も同じ気持ちです。今、この瞬間を生きています」 「あぁ、そうだな。こうやって集えて幸せだよ」  その晩、お父さんと俺と芽生と、川の字に並んで眠りについた。  芽生の寝息が聞こえ出すと、お父さんに真剣な顔で問われた。 「みーくんは、落ち着いているようだな」 「はい、今はとても……」 「君のご実家の一員にもなれて、よかったよ」 「瑞樹はアイドルみたいに可愛がられていますよ」 「宗吾くんの口から聞くと安心するよ。大切な息子なんだ。どうか末永く……頼んだぞ」 「はい、俺はもう瑞樹だけです。安心して下さい」 「ほっとして、よく眠れそうだ」  そう言い切ると、お父さんはコテッと眠りに落ち、大きなイビキをかき出し、大きな寝返りを打ち出した。  やべぇ、芽生を避難させないと。  真ん中にいた芽生を端っこにして、俺が真ん中で眠りについた。  ははっ、さすが森のくまさんだな。    寝相もイビキも豪快だ。  すると寝言で「今日はさっちゃんのとなり……じゃないから、暴れてる」だってさ。  ははっ、面白い人だ。  こんな愉快で楽しくて……頼もしく情の深い人が、瑞樹のお父さんになってくれて本当に良かった。  感謝しています。  目を閉じて感謝の意を伝えて……いい雰囲気だったのに、突然バチーンっと手が顔に当たった。 「ははっ、イテテ……豪快なお父さんだな!」  お父さんか……  いい響きだ。  俺にとっても、お父さんだ。  もう二度とそう呼べる人はいないと思っていたから、とても嬉しい。

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