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HAPPY HOLIDAYS 24

 潤くんといっくんを見送って、私は少しだけお布団に横になった。  隣では槙が両手をバンザイのポーズで眠っているわ。  すやすや、すやすや、ぐっすりね。  ふふっ、槙は寝顔まで潤くんそっくりだわ。  あなたはパパに似て逞しくなりそうね。  いっくんとは骨格が違うから、がっしりした赤ちゃんだわ。  真夜中に槙に授乳をしたらそのまま眠らなくなって、私も起きていたから寝不足なの。  だから、少しだけ、少しだけ……眠らせてね。    瞼がとろんと閉じていく。  それにしても……眠い時に眠れるって、幸せなことね。  こんな風に自分に甘くなれたのは、潤くんと出会ったおかげよ。  潤くんと再婚して、新しい家庭を築き、新しい家族が生まれ、私はもう一人で何もかも背負わなくても良くなった。  嬉しいことも悲しいことも、分かち合ってくれる人がいるから。  そのことに最初は慣れなかったの。  でも、いっくんの方からどんどんその垣根を跳び越えていってくれる。  いっくんが潤くんを大好きになってくれて嬉しい。  潤くんがいっくんを大好きになってくれて嬉しい。  二人の仲が深まれば深まるほど、私は幸せで満ちていく。 **** 「いっくん、寒くないか」 「うん、だいじょうぶ」 「ところでなんで空っぽの箱を持ってきたんだ?」 「えへへ、ないちょ」  砂糖菓子のように笑ういっくんが可愛くて、今年も新年早々、こみ上げてくる確かな幸せを感じていた。  初日の出を見た後は、まっすぐ家に戻った。  アパートが見えてくると、いっくんが一目散に駆け出した。  そんなに急いでどうした?  手には大事そうにさっきの小さな箱を抱えている。  それは兄さんからもらった鎌倉の和菓子が入っていた箱だよな。  今は何が入っているのか、ワクワクするな。 「ママぁ、ママぁ……あっ」  玄関で靴を脱いでいると、いっくんが戻ってきた。    そのまますみれの胸に抱きつくと思いきや、どうしたのだろう? 「あのね、パパ、ママおねんねしてるよ」 「あぁ、そうか、昨日よく眠れなかったんだな」 「パパ、あのね、ママがおめめさますまで、おこさないでね」 「そうだな。でも……いっくん、さみしくないか」  その箱にはママにお土産が入っていたのでは?  そんな気がしたから聞いてみると、いっくんは明るく笑ってくれた。 「えへへ、もう、とどいたみたい」 「ん?」 「あのね、はつひのでさんにね、おねがいしたの。ママがゆっくりおねんねできますようにって」 「そうだったのか」 「だってママいつもいそがしそうだったから……えっと、このはこにはね、おねがいごとをした、おひさまのひかりをいれてきたの」  子供の世界はいつもメルヘンだな。  夢と希望がぎっしり詰まって、驚くほどだ。  子供の近くにいると、オレもおとぎの国にいるような気分になるよ。 「じゃあ、ママが起きるまで、おせちの用意でもするか」 「うん、いっくんもてつだうよ」 「頼む」 「あい!」  すみれが用意してくれたおせち料理を重箱に詰めてみた。  専門学校時代に割烹料理屋の厨房でバイトしたおかげで、盛り付けは得意なんだ。こんな風に役立つなんて不思議だな。 「パパ、しゅごい、じょうず」 「へへ、そうか」 「パパがいると、ママがしあわせだね」 「そうか。いっくんに言ってもらえるとうれしいよ」 「いっくんもしあわせだよ」  いっくんがとろけるように笑ってくれるので、手を休めて抱っこしてやった。 「まだまだ抱っこできるな」 「うん、まだまだしてね」  オレたちゆっくりゆっくりでいい。  ゆっくり確実に父子の関係を築いていこう。 ****  僕はログハウスで一番最初に目覚めた。  窓の外は一面の雪景色だった。  北国の朝に深呼吸。  うん、もう大丈夫だ。  ゆっくり休んだ分、身体はすっかり元通りになっていた。  そして昨日お母さんに甘えられた分、心が強くなった気がする。  こうなると……次は……  会いたい。    無性に宗吾さんと芽生くんに会いたい。  そう思うと自然と足が2階へと向かっていた。  僕たちのために用意してもらった部屋へ行ってみよう。  扉を開けると、宗吾さんがお腹に芽生くんを乗せてグーグーと眠っていた。 「くすっ、まるで熊の親子みたいだな」  僕はタタッっと駆け出した。  僕も加わりたくて。  ところが床に大きな物体があって、思いっきりそこにつんのめって前に倒れてしまった。 「わぁ!」  躓いたその先には宗吾さんが眠っていた。 「おっと!」  芽生くんを押し潰してしまうとヒヤッとすると、宗吾さんが片手で僕をキャッチしてくれた。 「お、おはようございます」 「瑞樹、朝からサービス精神旺盛だな」 「あっ……」  あっという間に唇を奪われる。 「お、は、よ、う」  キスは欠かさないと宣言した通り、宗吾さんは毎日僕にキスをする。  そして僕は毎日幸せを噛みしめる。 「おはようございます。宗吾さん……僕……もう、すっかり良くなりました」 「よかったな」 「宗吾さんもよく眠れましたか」 「うーん、アイテテ……それがさぁ、なかなか手強くて」 「え?」 「あれ? お父さんどこだ?」  グォオォー    キョロキョロと見渡すと、床から地響きのようなイビキが聞こえてきた。 「ははっ、お父さん、最後は床ですか」 「お父さんってば~」  明るい、明るい朝がやってきた。  笑顔で迎える朝に深呼吸!  

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