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冬から春へ 7
お詫び
朝更新した分ですが……『冬から春へ』6を飛ばして7を更新してしまいました。
今、先ほどアップしたものを6に上書きして、新たに7を追加させていただきました。(この頁です)
最近更新がコンスタントに出来ないのには理由がありまして……
エブリスタのエッセイでは書かせていただいたのですが、こちらでも。
今の状況を書かせていただきますね。
現在……実家の母が大腿骨骨折で手術入院してしまい、実家に高齢の父のみが突然取り残された状況で、まだ生活が落ち着きません。今、母の転院先のリハビリ病院を探している段階です。そのやりとりや面談、見学などがあってバタバタです。春庭も迫っていますし、BOOTHの発送作業もさせていただくので、しばらくの間『幸せな存在』と1日置きの更新させて下さい。
でも、1日置くことで、より絞った文章や展開に出来るかも!とも、思っています。
何よりこのスタイルなら、なんとか大好きな創作を続けられそうです。
それが個人的に嬉しいです。
読んで下さってありがとうございます。
長々とすみません。
では本文です。
(後日消します)
****
芽生が瑞樹に起きたことを自分なりに案じ、察し、励ます様子に心を打たれた。
まだ小さいのに、しっかり思いやりの心が育っている。
それに比べて私は瑞樹と出会うまで、美智の心に寄り添う所か切り捨ててばかりだった。
自分本位だった私に、美智はいつも寄り添ってくれた。
「美智、いろいろありがとう」
「とんでもないわ。困った時はお互い様って言うでしょう?」
「美智が菫さんの着替えや赤ちゃん用品を渡すことに気づいてくれて、助かったよ。私は思いつきもしなかったから」
「それは無理ないわよ。女同士だからって部分で、私も役に立てて良かったわ」
「あぁ、美智はすごい」
「憲吾さんってば、そんなに褒めないで」
私と美智のやりとりを芽生がじっと見つめていた。
「どうした?」
目が合うと、可愛らしい笑窪を作ってくれた。
「えへへ、いいなって! おじさんとおばさんもアチチだね。アチチはね、なかよしさんの証拠なんだよ。だからボクのおにいちゃんとパパもアチチだよ」
「そうだな。美智と私も……アチチだ」
アチチ?
こんな言葉使ったことがないが、芽生の世界に降りて答えてみると新鮮な気持ちになった。
「パパぁ、パパぁ~」
「あーちゃん、こっちにおいで」
あーちゃんをだっこすると、ようやく安堵した。
瑞樹の弟さんのアパートが全焼してしまったと宗吾から聞いてから、バタバタだった。
「無事だといいな」
「きっと大丈夫よ。神様が味方してくれるわ」
「あぁ、信じよう」
祈るような気持ちで、空を見上げると……
「そうだ!」
私にも出来ることがあるのに気づけた。
人には役がある。
私だからこそ動けることがある。
「美智、あーちゃんを頼む。私も役に立ちたい」
「了解よ。憲吾さん、頑張って!」
私は急いで、電話をかけた。
****
「……寒い」
「すみれ、しっかりしろ」
必死にすみれの肩を抱き寄せて擦ってやる。
「これから……どうしたらいいのかしら……なんだか頭がぼーっとして何も考えられないわ」
「そうだ!」
思い切って南天をくれたおばあさん家のインターホンを押してみた。優しそうな人だった。だから頼れると思ったが、あいにく留守だった。
「今日は留守みたいだな」
「そうね、電気が消えているもの。そう言えば息子さん家族が郊外にいて、よく泊まりに行くと言っていたわ」
「そうか、とにかく……どこかに避難しないと……それから兄さんに連絡をしないと」
「潤くん、瑞樹くんの番号分かるの?」
「えっと……あっ……」
便利な世の中だが、固定電話にかける習慣がなくなってから電話番号を覚える習慣もなくなっていた。
どんなに記憶を探っても、浮かばない。
「ヤバい……『瑞樹兄さん』と登録していたから番号を覚えていない」
「それ、私もよ」
「参ったな」
まずいな。
こういう場合どうしたらいいのか。
きっともっと方法があるはずなのに、気が動転して思い浮かばないぞ。
しかし……何はともあれ、家族全員無事で良かった。オレの帰りがいつも通りだったら、菫と槙が大変なことになっていた。
そう思うと、今頃になって身体がブルブルと震えた。
真冬の寒空いつまでも、ここにはいられない。
そこに警察の人がやってきた。
「すみません。火災のあったアパートの住人の方ですか。火事にはいつ頃気づきましたか」
「はい、そうです、俺が最初に1階から火の手が上がっているのに気づきました」
「では、あなたが第一発見者ですね。速やかな通報と人命救助をありがとうございます」
そこに消防隊員もやってくる。
なんだか大事になったな。
氏名、住所、連絡先、職業、現地にいた理由、火災発見時の状況など任意で質問を受けた。
皆、無事で怪我人が出ずに済んだことを教えてもらえ安堵した。そして最後に「可能であれば後日改めて話を聞かせてほしい」と言われたので、ヒアリングに対応をする承諾もした。
消火活動に命がけであたってくれたのだから、出来る限り協力したい。
そこにもう一人警官がやってきた。
「すみません、もしかして、あなたは葉山潤さんですか」
「え? どうしてオレの名前を?」
「滝沢判事……いや、今は弁護士の滝沢先生から連絡を受けました」
え……滝沢って……宗吾さんのお兄さんのことか。
「取り急ぎ、お兄さんの『葉山瑞樹』さんの連絡先を言付かってきました。すぐに安否を知らせてあげて下さい」
「あ……ありがとうございます」
「この電話をお使い下さい」
「ありがとうございます!」
なんてことだ。
兄さんの幸せが、回り回ってオレを助けてくれる!
「もしもし? 葉山ですが……」
怪訝そうな兄さんの声に、オレは声を張り上げた。
「兄さん、兄さん、オレだ! オレは無事だ! 菫もいっくんも槙も、みんな無事だ! 誰も怪我していないから安心してくれ」
兄さんの声が詰まる。
「潤……じゅーん、本当に潤なの?」
「あぁ、オレだよ」
「よかった。無事で良かった……うっ……」
濡れていく声に、どんなに兄さんがオレを愛してくれているかが、じわりと伝わってきた。
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