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『春庭特別番外編』

今日は本編から離れて、昨日の春庭参加記念の番外編SSになります。 春庭に来られなかった方にも、お土産をと思い、書き下ろしました。 滝沢ファミリーのいつも通りの日常、のどかな休日です。 **** 『Special Blend』 「瑞樹、芽生、おはよう。お!よく晴れてるな。今日はピクニックに行かないか」 「おはようございます。いいですね。今日は春らしいお天気ですし」 「パパ、お兄ちゃん、おはよう! わぁー 行く! 行く!」  歯磨きをしていた芽生くんも、宗吾さんの提案に大喜びだ。 「じゃあ、お互い支度をしようぜ」 「はい!」    えっと、今日は何を着ようかな?  クローゼットで洋服を眺めていると、宗吾さんがやってきた。 「瑞樹、今日は俺が選んでもいいか」 「あ、はい」  くすっ、何を思いついたのかな?  宗吾さんのワクワク顔に、僕はいつも元気をもらっていますよ。 「あった! これだ、これがいい!」 「あ……これですか」  目の前に出されたのは、あの日と同じ服装だった。  淡いレモン色のニットベストに、宗吾さんに初めて抱かれた日を思い出す。  あの日も、近所の公園に遊びに行った。  僕は日中からあなたに抱かれることを意識してドキドキしていた。  宗吾さんもあの日と同じ、薄いラベンダー色のコットンセーターをラフに着ていた。芽生くんもあの日と同じ赤いトレーナーだ。あの日着ていたものはとっくにサイズアウトしてしまったが、定番らしく大きなサイズのものを買い直したばかりだった。 「お昼も作ったよ」 「いつの間に?」 「張り切った時の俺は、何でも出来る」 「くすっ、お掃除以外はですよね」 「はは、まぁな」 「くすっ」 「頼りにしているよ」 「あ……はい!」  宗吾さんに肩を組まれると、心地よい重さを感じた。  頼りにしている。  それはとても嬉しい言葉だ。  あの日から僕は成長した。  幸せに臆病ではなくなった。  自分から前に進めるようになった。  あなたをもっともっと好きになった。  公園の芝生には、沢山のシロツメグサが生えてベッドのように盛り上がっていた。    その光景に目を細めた。  幸せな日常は、今日も続いている。  芽生くんとロープのジャングルジムで遊んだり、駆けっこをしたり、あの日のように身体を思う存分動かした。 「瑞樹、今日もいい風が吹いているな」 「はい、そう思います」 「喉が乾いただろう」 「はい、あ、あの日はアイスティーをご馳走になりましたよね」 「あぁ、そうだったな。よく覚えているな」 「大切な時間ですから」 「今日はこれにしよう」  宗吾さんがコーヒーのドリップパックを取り出して、マグカップにセットし、丁寧にお湯を注いでくれた。   「ありがとうございます」  ほんの少しだけの苦味、その後はコーヒー本来が持つ甘い香りが香るコーヒーだった。  「とても美味しいですね。どこのコーヒーですか」 「これは、俺たちのSpecial Blendさ。大沼のお父さんがブレンドしてくれた」 「え、いつの間に?」 「瑞樹、俺たち出会ってから今年で5年になるな。お父さんが5周年を記念してBlendしてくれたんだ。『森のくまさんカフェ』オープンに向けて準備中で、息子3人の名前のコーヒーを出すと張り切っていて……これは『MIZUKI』君だよ」  なんて嬉しいサプライズなんだろう。 「お父さんは僕を感激させる天才ですね」 「あぁ、瑞樹、君はこの世でたっぷり愛されている」 「はい!」  三人でそのままシロツメグサの花咲く原っぱに寝そべった。  ここは緑の匂いで溢れている。  青空が視界一杯に開け、見上げた空は今日もどこまでも澄んでいた。 「今日も青空だな。瑞樹、あの日から君をどんどん好きになっている。どんな天気でも俺たちは寄り添って生きて行こう」 「はい」 「瑞樹……10年、20年、ずっと先の未来まで一緒に暮らそう!」 「はい、宜しくお願いします」 **** 以上、春庭Specialでした。 また本編に戻っていきますね。 いつも読んで下さりありがとうございます。

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