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甘美な企み 04

「俺はきっとおまえの望む未来を与えてやれない。それでもいいのか?」  かすかに葛藤をにじませながらそう問われ、先ほどから曖昧な言葉で答えをにごしていた彼の心が見えた気がした。 「……いいよ。俺はあなたをひと目見た瞬間からこの時を待ってた。抱いてもらえるだけで十分だよ」  本当は夜が終わってもレオニードとの縁を終わらせたくはなかったが、そんな虫のいい話はない。 そもそもベータのエイノでは彼と釣り合いなどとれるはずもなく、夢を見るだけ無駄である。 「わかった。シャワーの後、おまえを抱く。少し待っててくれ」  今度こそはっきり『抱く』と宣言され、体中が発熱したように火照(ほて)った。 バスルームに向かう後ろ姿をぼうっと眺めていたが、扉の閉まるパタンという音で我に返る。 「あっ、今のうちに……!」  エイノはハルと共にポケットへと忍ばせておいたチューブ状の潤滑ゼリーを取り出した。 素早くズボンと下着を下げて尻を突き出し、後孔へチューブの先を突き入れる。 (うわ……気持ちわる……。でも、オメガはここが濡れるっていうし……)  思いつく限りの小細工を施さないと安心できない。 行為の最中に正気に戻られることだけはなんとしても避けなければ。  エイノは潤滑ゼリーをすべて後ろに注入すると、何事もなかったように下着とズボンを引き上げた。 ドキドキしながらうつ伏せでベッドへと倒れ込む。

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