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第3話
目が、覚めると、見たことのない床。
いや、さっきまでいた、ホールの床。
ん? なんでこんなところに、俺はいるんだ?
妹は? どこだ?
顔をあげると、そこにいたのはヤツ、
ではなく。
「……どうなんだ? 婚約破棄を受け入れてくれるか」
きれいな顔をした、美形がたっていた。
待て。
本当に、ここはどこだ。
俺は、呆然とした顔で彼を見ているのだろう。
何だか本当に、実感がなくて、ただただその顔を凝視する。
「……そんな顔をしないでくれ。わかっている」
それを、切なそうに見られる。
「彼をお前から奪ったのは、私だ。悪いのは、私たちだ。――婚約破棄は、君からしてくれ。慰謝料を払う」
「……いしゃりょう?」
美形は、後ろ手に何かを庇いながら、ゆっくりと首肯く。
何かを。
いや……。
「ラバセナ?」
自分の口から、自らの婚約者の名前が出ると、美形の後ろから、ひょっこりとすまなさそうな、顔が出てきた。
人形のような、愛らしい顔。
俺の婚約者、ラバセナ。
「……ゴメンね、エドアス。僕、王太子さまが、好きなんだ」
次の瞬間、
「――っあああああァァァアアアッッ!!」
俺の頭に膨大な情報が流れ込み、とんでもない頭痛が襲ってきたかと思うと、ふつり、と、意識が途切れた。
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