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後編
それから何日経ったのだろう。ふと平塚さんの顔が浮かんでほんの出来心だった。また、あの路地裏へ入ったのだ。
「お兄さん、俺とキモチイイこと、しない?」
暗闇に紛れてあの人の声が耳元で囁かれる。
「……平塚さん、俺は男は抱けないって言ったじゃないですか」
「あーりゃりゃバレちゃったかー。東城さん、久しぶり」
振り返るとそこにはズタボロになった平塚さんが立っていた。この前見た時よりやつれても見える。
「どうしたんですか!?早く救急車……」
「いいって大丈夫。ただ今日は変なのに捕まっちゃってねぇ……1人で10人まわしたかな……」
ヘラヘラと笑って言ってのける平塚さんに平手打ちをする。
「おいおい、一応怪我してるんだけど?」
「……もっと自分を大事にしてください……」
すると少し沈黙が訪れて、代わりに笑いが落っこちる。
「ははは……東城さん、それはΩにとつて一番の侮辱だわ」
平塚さんは目尻に涙を溜めてひとしきりに笑うと鋭い目が俺に刺さる。
「散々Ωは卑しいって言ってさそれはないだろ。それしか生きる道がないんだよ。αやβと違って、Ωはコレしか生きてけないの。あんたの恋人とったΩだってあんたらからして見れば、卑しい、最低だと思うかもしれないけど、俺はそいつのやった事は別に……」
それ以上は聞きたくなかった。ただそれだけの話。
気がついたら俺は平塚さんの口を自身の唇で塞いでいた。
「……別にあんたらΩの生き方を否定はしない。けど、平塚さんには俺がいるだろ!」
平塚さんは目をぱちくりして信じられないと言う風に口をぽかんと開けていた。
「Ωは嫌いだけど、それはアンタらが勝手に自分を蔑んで、勝手に忌み嫌われる行動をして、それでαやβのヤツらを妬んでるのが気に食わないんだよ。悲劇のヒロインみたいにしてるのが!でも……αやβの中にだってちゃんとΩとか関係なく接したいって奴もいるってこと、忘れんなよ!」
本当に支離滅裂だ。自分でも何言ってるかわからない。何を言いたかったのか。なんて言いたかったのか。分からなくて頬に涙が伝う。
「俺は!平塚さんのこと……同情かもしれない。でも、なんでか嫌いになれなかったんだよ……」
子供のようにわぁわぁ泣いて、目の前の平塚さんに戸惑わせて、それでも俺は平塚さんに他のΩと同じことを言わないで欲しかった。
「はぁ……全く、でっかい子供みたいな素直な人だね、東城さんは」
平塚さんは俺と同じ目線に合わせてしゃがみ込む。そして子供をあやす様に頭を撫でた。
「そんなんだから放っておけないんだろうな……」
「へ?」
思わず間抜けな声が出て平塚さんに向き直る。するとすかさず平塚さんは深いキスをする。
「……ねぇ、本気で東城さんのこと、落としにいってもいい?」
甘い声と艶っぽい顔で不敵に笑ってそう言ってのけた平塚さんは指先で俺の頬を撫でて、乾燥した唇に触れる。
どうぞご勝手に、という台詞は頭の中で浮かんでも上手く声にならずにヒュッと消える。
「俺のこと、犯したくて犯したくてしょうがなくしてあげるよ」
「だ、だって俺はβで……平塚さんとは番になれないから!」
やっと出た声は裏返って掠れてちゃんと言えやしない。
「じゃあ、毎日跡が消えないように噛んでよ」
「だから、俺は、平塚さんのこと、まだ受け入れたわけじゃ……!」
「……そうだったね。早まっちゃった。でもこれからゆっくり落としていくから」
そうして天真爛漫な笑みを向けられ、それとは対称的な舌が絡む甘いキスで何度も口内を犯すと、銀糸を絡みとって舌なめずりをする。
「もう、東城さん以外とはセックスしないから。責任とって俺のこと貰ってね?」
そう、俺はとんでもない灰かぶりの男を拾ってしまったらしい。でももう後には引けない。
「もう……好きにすればいいじゃないですか。煮るなり焼くなり俺を落とすなり」
やけっぱちになって乱暴にネクタイを緩める。すると平塚さんはにやりと笑った。
「そうこなくちゃ。で、どこでする?」
「……それ言わせようとしてます?」
平塚さんはわざと首筋に唇を当ててちゅ、と音を立てる。
「はぁ……じゃあ俺ん家いきますよ」
それを聞くと平塚さんは嬉しそうに、かつ妖艶に笑って見せたのだった。
「ん……アッんっ……ひら……つかさっ……んっ……!」
家に帰るなり玄関で所謂壁ドンをされ、そのままフェラをされる。そして器用にジャケットとワイシャツを剥ぎ取ってしまう。平塚さんは俺が感じてる姿を見てにやりと笑い、見せつけるようにまた舐めはじめる。
「やっぱり、東城さんは上物だわ。これを俺のケツにぶっ込まれたら、さぞイイんだろうね」
「く、咥えながら……っしゃべんっ……アァン……っ!」
下唇を噛んで必死に耐える俺を見上げる形で見ながら幸せそうに丹念に舐める。
「だって俺のフェラで行く所見たいんだよね。東城さんの綺麗な顔が俺のフェラで歪むなんてそれだけで興奮しない?」
そしてカリッと甘嚙みをすると、その刺激に耐えきれなくてそのまま達してしまう。
「ご馳走様♡」
ぺろりと口端に零れた精液を舐めとる平塚さんがいやらしい程腰に来る。
「もう本当に平塚さんエロすぎ……」
すると首に腕を回して舌を絡ませてぴちゃぴちゃと水音が響かせ脳内を犯す。
「そりゃ……こっちだって本気で落としにいってるからね……んっ……はぁ……」
甘ったるい喘ぎ声に目線を合わせるともう既に平塚さんは下半身裸で丁寧に後ろを解いていた。
「ねぇ……シよ?」
ゾクゾクと背中には駆け回る快感に身を任せ平塚さんを抱き上げる。
「……言っておきますけど俺、男抱いたことないんでヘタですよ?」
細っこい腰を俺のお腹にベタベタした液体と共に擦り付ける。
「育てがいあるからそれはそれで」
抱き上げている間も色んなところにキスを降らす。そして優しくベッドに降ろすとそのまま首を捕まえたまま、キスを再開する。
「キスもいいですけど、今度は俺が平塚さんを気持ちよくさせたい」
平塚さんの静止の前に俺は平塚さんのチンコを咥える。俺は平塚さんと同じように気持ちイイところばかり攻め立てる。
「んんっ……!やぁ……んめっ………アァンっ……はぁ……っん!」
「……もうイッちゃったんですか?」
平塚さんは淫に涎を垂らして喘ぎ声を隠すこともなくアナルを俺に向けた。
「おっ……お願い……早く……いれっ……て?」
「待ってください、今ゴムするので」
すると平塚さんに力の入ってない手で俺の手首を掴まれる。
「中出し……して……?」
その顔が最高にそそられて。もうこの男に捕まった時点で俺の運命は決まっていたんだと。相手は憎いΩだろうが、『平塚さん』には関係なくて。つまり俺は。
「平塚さん似の子供を産んでくださいよ?」
平塚さんはその言葉を聞くと、幸せそうに笑ったのだった。
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