「智ちゃーん、ちょっと手伝って欲しいことあるんだけどぉ、お願いできるかなぁ？」 「いいですよ」 「もしかしたら12月の週末全部拘束しちゃうかもしれないんだけどぉ……」 「全部？」 　突然カイトさんから来たお願いに、オレはビックリしながら詳しく内容を聞いてみた。だって12月の週末全部拘束ってめちゃ大変そうだもん、もしかしたら全部は無理かもって思いながらね。 　カイトさんが言うには、とあるところに一週間分の食料を持っていくことになったから、それを手伝って欲しいってことだった。もしかしたら、最初の週だけで後は必要なくなるかもしれないけど、たぶんそれ以降の週も必要になるんじゃないかって話だった。買い物はケンスケさんとカイトさんでしておくから、オレが行くのは土曜の夕方からで、日曜の朝に終了ってカンジ。つまり、夕方に下ごしらえと前日にできるものを作って、残りは当日の朝ってことだった。 　まあそれだったら自分の家のこともやる時間があるから出来るかなって思ったよ。でもさ、オレよりタケルの方が料理上手なんだよねぇ……。そう言ったら「オレが智ちゃんとやりたいのぉ」だって。嬉しいような嬉しくないようなカンジだけど、別に他に用事があるワケじゃないし、忙しくしてた方が気がまぎれると思ったからやることにしたんだ。 　それにしても誰に持ってくんだろうね？　きっとケンスケさんかカイトさんの身内とか親戚とかってカンジなんだろうな。一応聞いてみたら『青年』としか教えてもらえなかったけど。 「こんにちはー」 「智ちゃんいらっしゃーい、早速だけど手伝ってくれる？」 　オレが行ったら既にカイトさんが台所で作業を開始していた。とりえあえず、カレーと煮物２種類作るって言ってたから、オレは野菜の皮むきとかの作業を手伝った。ふふふ……、高校卒業したばかりの頃は包丁で皮むきなんかした日には、実が半分になっちゃったりしたんだよねぇ。今では皮は薄くむけるし千切りも細くできる……、そう考えたらオレって上達したんだなぁってしみじみ思ったよ。まあ、最初がボロボロだったからそれが普通になっただけなんだけどね。 　煮物は出来た時点でタッパーに入れて、そこでゆっくり味をしみこませて明日レンチンしてから持ってくんだって。そうすると鍋が空くから別の料理に使えるって。あとカレーは冷凍することを考慮して今回はじゃがいも無しだって。何て言うか、ここに来てちょっと料理の知識が増えたと思う。 「お疲れさまぁ、智ちゃん来てくれて助かったよぉ」 「いやいやオレなんて、あんまり戦力になんないし……」 「そんなこと無いよぉ、ケンスケなんて全然ダメだもん」 「オレだって洗物とかやったじゃんか」 「そうだねぇ～、よく頑張りましたぁ。あとでハンドクリーム貸してあげるねぇ」 　今まであんまり気にしたことが無かったけど、ケンスケさんは料理は全くダメなんだって。でもカイトさんが料理上手だから、毎日美味しいもの食べてるんじゃないかな。 　晩御飯は今日作ったものを試食を兼ねて取り分けて食べることになった。こうやって見ると結構作ったんだなぁって思う。きんぴらとか、ひじきの煮物とかってのはオレ自身あんまり作らないから、今日ここに来て良かったなって思った。何て言うか、ほっとする味？　やっぱり良いよね、お袋の味的なおかずだと思うから。 「ホントにお疲れさまぁ、これで完成、智ちゃんありがとう」 「思ったより大変だー。オレ来週も頑張れるかな？」 「１回やったから慣れるんじゃないかなぁ。どりあえず来週もやると思うけど、どうなるかは後で連絡するねぇ」 　翌朝は早起きして、オレはおにぎりを握ってたんだ。おかずがあるから塩無しのごはんだけのおにぎり。朝炊き上がってたごはんだけじゃ足りないから、起きてからもう１回炊いたし。実はおにぎりなんて一度も作ったこと無かったけど、最後の方はかなりキレイに出来たと思うよ。カイトさんは炒め物や揚げ物を頑張ってた。 　そうそう、今回はちゃんと客用布団が用意されてたよ。さすがにね、あのベッドで３人で寝るのはもう遠慮したいもん。 　詰め終わってから出かける準備をして、それに合わせてオレも一緒にここを出た。嬉しいことにオレにも弁当が出たよ、カイトさんの作ったものは本当に美味しいから素直に受け取っちゃった。 　自分用の１週間分の食材を買ってから帰宅した後はぐったりしてた。この様子だと、洗濯とか掃除なんかは土曜にやった方がよさそう。でもホント、引き受けちゃったけど来週以降も出来るかなぁ……。かなり不安なんだけど。 「智ちゃーん、来週以降もやること決定だよぉ」 　夜カイトさんから連絡が来た。中止にならないかなぁって密かに期待してたんだけど、やっぱ来週以降もあるってさ。それにしてもカイトさんは元気だなぁ。オレより大変だったハズなんだけどね、あの元気の素は何なんだろ？ 　寝る前にふと、明日はカレーを作ろうかなって思った。たくさん作って１食分ずつ冷凍しようって思ったんだ。カイトさんのところで覚えた知識は役立てないとね。オレ男だけど、カイトさんの手伝いをしてたら立派な主婦になれるかも。