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第4話
ヒロが買ってきた雑誌の表紙には大きな字で「愛とセックスの関係」と書かれていた。
試してみたい体位、やってみたいプレイ、その辺りのコラムを読むためにヒロは買って、マモルの家に置いてきた。
次にヒロがマモルの家を訪ねた時、マモルは真剣な顔をして、座っていた。
机の上にはその雑誌が置いてあった。
ヒロはゴムの入ったドラッグストアの復路を片手に立ち尽くした。
「な、何だよ」
ヒロは咄嗟に別れ話をされると思った。もし体の関係がなくなっても、せめて友達でいたい。
愛される可能性を捨てたくなかった。
「座って」
「え、」
「いいから座ってって言ってるの!」
ヒロはビクビクしながら座った。まさか浮気を疑われたのかと思った。しかし、ヒロは浮気をしてないし、浮気が禁止だなんて言うような間柄ではない。
「前から思ってたんだけどさ、僕に付き合わせちゃってごめん」
雑誌から顔を上げずにマモルは言った。目には涙がたまっていた。
「何言ってんだよ? 俺だって好きでやってるし、マモルが気にすることなんて──」
「ヒロはどうして欲しいの? 言われなきゃ分かんないよ」
「それは……」
「なに、愛して欲しいの。好きだって言いながらキスして、ヤってる最中も愛を囁けばいいの?」
「違う。ただ、こういう特集って愛と結びつきやすいってだけで俺は──」
「友達として、セックスフレンドとして愛してるのはダメなのかな。好きだよ。でも多分、雑誌とかに書いてあるのとは違うんだ、俺の気持ちは」
「分かってる。俺だってマモルと同じ気持ちだ」
本当は全然違う。雑誌にあるような気持ちだって、恋人のような愛で心から愛されたいっていう下心もまだ諦めきれない。
「嘘つかないでよ」
「ついてない。ついてないから大丈夫だ」
ヒロはマモルの身体に腕を回し、包み込むようにハグをした。
「なんか色々気を遣わせて本当に申し訳ないな……」
マモルは遣る瀬無さと悔しさから涙をぽろぽろ零した。
マモルは優しい人なのだ。人の意思を尊重して強制させない。だから振られた時も、拒絶せず受け入れてきたし、関係が長く続かないことも多くあった。
それでいてマモルにもマモルの意思があるから、自分の意思も尊重する。
相手が妥協できなくなった時点で、マモルとの関係は崩壊する。
ヒロはそれを分かっていたから、マモルと友達になれた。そもそも二人とも感性が似ており、無理をしなくとも心地よくいられたのもあるが。
「大丈夫だ。愛が欲しい奴もいるけど、なくても満足できる奴もいるんだよ」
「うん」
「今さら大衆向けの雑誌の見出しに流されるのか?」
「そうだね」
「気分が落ち着いたらヤるか? 泣くとむしゃくしゃしてヤりたくなるだろ」
「うん」
「あのさ、ヒロ。少しずつだけど、ヒロへの愛が大きくなってるって感じるよ。セックスが前よりずっと気持ちいい」
「あぁ、そうかよ」
君に愛されたかった
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