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第4話
彼はきっと、誰にでも優しいんだと思う。あの時の相手が僕じゃなくても、彼は同じ事をしただろう。
「えーと、これで…『どうしたの?』…出来てる!?』
『うん!』
「っしゃ!じゃあ、次は…。」
…あの時の相手が、僕でよかった。
「あ、ぃ…、」
「…え?」
こんな僕を、見つけてくれて…
「あい、あ、ぉう!」(ありがとう)
ずっと届けたかった、僕の声。
人に笑われて喋る事をやめたけど、君が僕に歩み寄ってくれた一歩は、それをも打ち砕くほど大きかった。
「…っ、んだよ、それ…っ!」
「…?」
「……すげぇ、反則。」
「?…?」
彼の口は動いているけど、下を向いているため何を言っているのかわからず、もしかしたら僕の声が気持ち悪かったのかも…なんて血の気が引いた時、彼がパッと顔を上げた。
そして…。
「『好きだよ』」
なんて、手話と共に、口も確かにそう動いた。
彼の言う"好き"は、友達として…ではなく。
「だから、俺の事…、」
「…っ!」
スッと彼が手が僕の手に触れ、そのまま指を絡めてきた。指と指の間から伝わる熱で、ドキドキと煩いほど胸が高鳴って、身体が火照る。
「今日から、恋愛対象として、意識し…っうわ!」
僕が読み取れるよう、ゆっくり話す彼の言葉を理解した瞬間、僕は我慢出来ずに抱き付いた。
「っえ?えっ?急に、どうし…、」
「…ぃ…っ、」
「…!」
伝えたい。「僕も一緒だよ」って。
「う、ぃ、…っ…、」
「…ゆっくりでいいよ。」
涙で彼の肩を濡らし、しゃくり上げながらも喋ろうとする僕の背中を、優しく摩る。たったそれだけで、彼が「焦らなくてもいい」と、「ちゃんと待ってるから」と言ってくれてる様な気がして、すごく安心した。
「す、ぅ…、き…っ!」
「…うん、俺も。」
精一杯、一番言いたかった事を言うと、彼は僕の頭を撫でながら、ぎゅうっとキツく抱き締めてくれた。
****
「俺の名前は、手話でどうやるの?」
『崎(さき) 叶(かなえ)』
「へぇ!…見てて!」
「?」
「『紅(くれない)心(こころ)』!」
「ふふっ、『上手』!」
-FIN-
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