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第3話

彼のことを知ったのは、数ヶ月前。 講義室に向かっている途中、僕の落し物を拾ってくれたのが、きっかけ。 「これ落としたよ!」 「っ!」 肩を叩かれ振り向くと、いつもカバンにつけているキーホルダーを彼が持っていた。 そのキーホルダーは年の離れた妹がくれたもので、慌ててそれを受け取る。 「ははっ、大切なものだったんだな!」 唇の動きでなんとなく彼の言葉が分かり、こくりと一回頷く。にこにこしながら話してくれる彼を見て、僕に向かって何度か声をかけてくれたんじゃないかと思った。 今までも、こういった事は何回かあって、その度「無視した」と、相手の気を悪くさせてしまい、悪態をつかれるのも少なくない。 「もう、落とすなよ?」 なのに彼は僕に優しく微笑んで、くしゃりと頭を撫でてくれたのだ。その時、髪から伝わる彼の体温に、じわじわと顔が熱くなっていくのを感じた。 「…っ、」 お礼…、お礼言わなきゃ…!上手く伝えれるか、わからないけど…っ! 「っぁ…」 「じゃ、俺行くな!バイバーイ!」 口を小さく開け息を吐き出そうとした瞬間、彼は最後にニカッと笑い、僕に手を振って行ってしまった。呼び止める間も無く、小さくなった彼の後ろ姿を見て、出そうとした声を飲み込む。 「(僕の声じゃ、届かない)」 キュッと唇を噛み締めて、講義室へ走った。 …そんな出来事があってから数日後、僕の友達が、彼と友達だという事を知った。 「え?あいつと友達になりたいの?」 『うん!…ダメかな?』 「ダメなわけないじゃん!今度会わせてやる!」 「…!『ありがとう!』」

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