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第1話(序章)

 北緯66度33分、またはそれ以上の北。太陽が終日沈まない日と現れない日がある、植物限界の不毛の地に、白い狼が生息している。  その昔、元々すべての野生の狼の毛は、白い色をしていた。  その身体を覆う長めの毛は、混じりけがなく真っ白く。  白夜の満月、極夜の新月の下、海氷の上を歩く姿は、荘厳なまでの美しさだったと伝えられている。  しかし、長く続く温暖化の影響で世界は少しずつ蝕まれ、食べ物となる獲物が減り、絶えず飢えに苛まれ続け、一部の群れは極寒の地を後にする。  そうして時の流れと共に、他の種との交雑により、白い色の狼は数が激減していった。  人里に降りた狼の群れが人を襲ったこともある。そのせいもあり、北方では今も狼狩りが盛んに行われている。  ウェアウルフ(人狼)が、いつから存在していたのか誰も知らない。  しかし世界各地で、伝説は今も残っている。その中には、嘘の話もあるし、本当の話もある。  ただ、これだけは言える。  ────『人種のるつぼ』と言われているイーストシスト(east schist)には、“人ならざる者”も紛れているという事を、人間達は知らない。  ────────────  美しき白い王よ。  私が、一生を賭けてお守りします。  だから……貴方の傍にいることを、どうかお許しください。  ────────────  ………… 『As you wish.』

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