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第1話

今日もまた、いつもと同じ日常が繰り返される。 同じと言っても、日々多少の変化の波はあれど至って平和な日々だ。 毎日TVに映る事件事故に、同情の気持ちは有るが、自分とはかけ離れた何処か遠くの出来事の如く自分には関係無い、自分でなくてよかったそう思う日々である。 そう、自分はこのまま社会になんの大きな影響も与えず、何事も無く静かに人生を送る。それが1番平和で良い。 齢25を迎え、仕事も覚えて慣れてきた頃だ。更に、職場のルールや人間関係もだいぶ分かってきた。 波風立てず生活に必要な金を稼ぎ、自分の趣味に投じる。それで充分。 何十億といる人間のたった1人でしかないのだから。 仕事帰り、今日も1日働いた体のこりを解すように肩を動かす。外はもう暗くなり、街灯やコンビニ、車の光が灯されている。 帰宅ラッシュは既に過ぎており、外を歩く人もまばらである。残業をしていたからこの時間だが、人の多い中帰るよりはこのぐらいの時に帰るのが好きだ。残業は極力したくはないが。 まあ、連休前最後の平日もあって、足取りはいつも以上に軽い。 頭の中は連休中のすごし方と今晩の晩飯の事でいっぱいだ。 さっさと飯にありつきたいので、コンビニで何か買おう。ついでに酒も買ってくか。 考えてるうちにコンビニにたどり着く。 夜であっても明るく、自分と同じ様に仕事帰りの人であったり、部活帰りの学生っぽいのが迎でも待っているのかコンビニ前にいる。 中に入れば店員の《いらっしゃいませ》と声がかかる。 目当の弁当コーナーへ真っ直ぐに進んで置いてあるどの弁当にするか思案する。腹も減っているので、肉が盛られた弁当を手にする。あとは酒だと、酒のあるコーナーへ向かい、冷えたビールを2つ手に持ったらレジに向い会計を済ませる。 《ありがとうございました》 手には先程買った物が入ったビニール袋。 あとはアパートに帰るだけ。 足取り軽く足を進める。 コンビニから少し歩いた所にある十字路 いつもの様に、左に曲がる。 住宅地に近づいていくせいか、ネオンの光は少なく街灯の光がぽつりぽつりと規則正しく並ぶ。 スマートフォンの画面を見れば20:38。外を歩く人々はコンビニ周辺と比べ閑散としている。 アパート到着後、夕飯は21時頃になるな……。 そんな事を思いながら、細い路地を通り過ぎる。 通り過ぎた後、カラン……と缶のようなものが転がる音が聞こえた。 夜の静けさもあり、そんなに大きな音ではないのに響いた。 何かの弾みで落ちでもしたのだろう。 気にせず、足を進める。 コツリ、コツリ 自分の後ろの方から足音が聞こえてくるではないか。 自分の他にも、この時間に帰る人間がいるようだ。ご苦労なことだ。 そんな事を思ったが、すぐに頭から薄れた。 暫くして唐突に背後の方から、そう、数メートル離れたであろう後ろから声が掛かった。 「ねえ!そこのお兄さん!」 楽しそうな男の声が響く。 こんな夜中に声掛けてくる奴なんてろくな奴はいないだろう。そして、きっと自分ではないはず。後ろを歩く人間に対してであろう。無視無視。 後ろのヤツは相変わらずコツリ、コツリと一定のリズムで歩いている。きっと後ろのヤツも無視を決め込んだのだろう。 しかし、変な奴が付いてきてもらっても困る。さっさと自分のアパートに帰るに限る。足速に帰宅道を歩く。 あれ??? どうしてだろうか、後ろを歩く奴も同じく足速になっている。帰る方向も一緒なのかな??? 何故だか背中がヒヤリとするし、気持ちが焦る。 自意識過剰なのかもしれないが、いやしかし、まさかまさか後ろの奴が俺の事追っかけて来てるとかないよな。 心臓がドクドクと波打つのが感じる。 まさかな……、 ビニール袋を持つ手に力が入る。 動物でも、先に攻撃を仕掛けた方が優位に立てると言うのがある。もし何かあればこちらから仕掛けてやる。 もう直ぐ自分のアパートに着く。

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