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第37話

 がくんと落ちた頭を、何か柔らかいものに支えられた。  ああ、気持ちいいな・・・・・・。  夢うつつに、「ノンケだけはごめんなんだよ・・・・・・」という苦々しい声が聞こえた気がするが、希の勘違いだったのかもしれない。  それからときどき奎吾と会うようになった。たいていは仕事上がりにどこかで軽く飲むかで、ときには奎吾のマンションにいくこともあった。  奎吾はゲイだということを抜かしても、これまで希の人生にはいないタイプだった。頭の回転が速く、自信家で、また皮肉屋。一度一緒に飲んだときにちらっと聞いた話によると、家族との関係がうまくいかなくなった奎吾は、その後祖父母の家に預けられたという。国家試験である「あん摩マッサージ指圧師免許」をとった後、しばらく国内のサロンで働いていたが、その後イギリスに渡り国際的に認知されているアロマテラピーの資格を取得した。日本へ戻ってきて独立したのは二十七歳のときだ。数多くある店の中で成功するのは容易ではなかっただろうに、口コミから評判を呼んで、予約がとれないほどの人気店になったのは、希もよく知るところだ。  奎吾がどうして希と一緒にいる気になったのかはわからないが、最悪な出会いがあったことを忘れるほど、奎吾という男は知れば知るほど興味深かった。  奎吾の店が休みの前には、彼の家で飲んでそのまま泊まる(というか希が寝落ちてしまう)ことも珍しくなくなったころ、それは起こった。 「ほら、そのまま寝るな。風邪を引くぞ。寝るならちゃんと布団で寝ろ」

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