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第43話

「いきなり何言うんだよ。吹きそうになったじゃねえか」 「いきなりじゃねえよ。元はお前が言い出したことだろ」 「そりゃまあそうだけど・・・・・・」  なんだかあらためて言われると無性に恥ずかしい。 「何でもねえよ。たんなる冗談っていうか、日常会話だろ」  空き缶をゴミ箱に捨て、仕事に戻ろうとした希は、その腕を金井につかまれた。 「日常会話でお前はオナニーのおかずの話をするのか!」 「わーわーわー!」  希は慌てて金井の口を塞いだ。 「ごめんなさい! 俺が悪かったです!」 「どうなんだ、さっきのは柏木の話なのか」  重ねるように訊かれて、希は降参した。 「そうだよ! 俺の話だよ! だったら何か文句あるかよ!」  真っ赤な顔で認めた希を、金井は何を考えているかわからない目で見ている。 「・・・・・・やっぱ引くか?」  奎吾とキスをした夜から、希は変なのだ。幸いなことに、奎吾はあの夜希が彼の手でイったことに気がつかなかった。ひょっとしたらキスをしたこと自体酔った勢いで、希の記憶からないものだと勘違いしているかもしれない。

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