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第46話

 いったいどうしてこんなことになっているのだろう。  希は何度後悔したかもしれないことを再び思い、ひっそりとため息を吐く。希の目の前では、初対面の男二人が一見にこやかに酒を飲んでいる。しかし、言葉の端々や空気からはピリピリしたものが伝わってきて、希はこの場から逃げ出したくなった。  金井からの妙な脅しを受けた後、希はしばらく考えた後、奎吾にラインした。きょうは週の半ばで、奎吾は仕事のはずだ。見ず知らずの希の同僚が一緒に飲もうと言っているからといって、そんなおかしな誘いに奎吾が乗るとは思えなかった。奎吾が断れば、それが立派な言い訳になると思ったのだ。それなのに奎吾が理由を問わず承諾の返信を返してきたとき、希は思わずええ~っと声を上げたくなった。 「それで蒲生さんはマッサージ師さんなんですよね。いや~、すごいな。手に職ってやつじゃないですか。うちの課の女の子も話していたんですよ。まるで天国のマッサージだって。どれだけエロいんだって言ったら、本気で怒られましたけど。でもここだけの話、プライベートでもモテモテなんじゃないですか? これだけの男前だし、狙った女の子で落ちない子なんていないんじゃないですかね? 蒲生さん、普通のマッサージじゃなくて、アッチのほうも相当巧そうだ」 「金井! お前何言って・・・・・・っ!」  金井はわざと奎吾を挑発しているようだった。露悪的とも思える笑い声をたてる同僚に、希は慌てた。いくら何でも今夜の金井はおかしい。もともと軽いやつではあったが、決してバカではないし、鈍くもないはずだ。言って良いことと悪いことのつかないやつではない。

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