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第54話
「だったら会いにいきなよ」
「えっ」
「その人がきょうどこにいるかのぞちゃん知らないの?」
「そ、それは・・・・・・」
もし予定が変わっていなかったら、奎吾は初めて希と会ったゲイバーのカウントダウンパーティーに顔を出しているはずだ。
ほら、のぞちゃん早く着替えて、顔を洗ってしゃっきりとしてねと明に急き立てられながら、希はバタバタと準備をする。
「のぞちゃん、がんばって!」
家を出るとき、希は先輩と手をつなぐ明から盛大なエールを送られた。
大晦日の夜ということもあって、街は多くの人で賑わっていた。前にきたときは人気がなかった新宿二丁目の路地も、今夜は関係のなさそうな女の人の姿も見えたりする。駅から人混みをかき分けるように息を切らせ、ようやく店へと辿りついた希は、ドアの前でとたんに躊躇した。
奎吾に会いたくないと言われたらどうしよう。奎吾はただ単純に希の存在が鬱陶しくなっただけなのかもしれない。ここまで駆けつけたのだって、無駄に終わるかもしれない。それでもーー。
希はぎゅっと唇を噛みしめる。
会いたかった。ただ奎吾に会って、自分の気持ちを伝えたかった。
希は覚悟を決めると、店のドアを押した。
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