噂好きの毒きのこが言っていた。 『ベータのクラスにはナイショにアルファとオメガが住んでいる』って。 毒きのこが、どこでその情報を手に入れたかは分からない。でも、みんながソレを信じてる。 馬鹿なヤツら。 ｢毒きのこの話、信じる？｣ 廊下でボーッと外を眺めていた俺に、お姫様はそう話かけた。ベータのクラスのアイドルで、小さい身長と女みたいな顔立ちから付いたあだ名は、本人も随分気に入っているみたいだ。 ｢信じる方が間違ってる｣ ｢僕もそう思うよ｣ 毒きのこってのは、間宮優太郎のあだ名だ。 本人のチャームポイントであるきのこの髪型は、ピンク色に染まっている。高校に入学した時は黒だったのに、青やら緑やら金色やらに髪色を変えて行って、今はこの派手な色に落ち着いている。これが彼が毒きのこと呼ばれている理由の一つである。 ｢そうだ、これ毒きのこに持っててくれない？｣ ｢報酬は？｣ ｢明日の昼ごはん｣ ｢まあ…いいよ｣ お姫様の用事は仕事を俺に押し付ける事だったらしい。毒きのこに渡す封筒と、小箱を俺に渡すと笑顔を振りまいて教室に帰って行った。