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第2話

暇さえあれば毒きのこは、真っ白いキャンパスに毒々しい絵を描きつづけている。これが毒きのこのあだ名がついたもう1つの理由。 自称、美術部のエースらしくて、彼の制服は色とりどりの絵の具があちこちに付いている。 「おじゃましまーす」 美術部の壊れた扉を無理矢理開けて中に入ると、毒きのこの手は真っ赤に染まっていた。 驚いて目を見開くと、毒きのこはそれに気付いてケラケラと笑い転げる。 正直言って、毒きのこのツボが分からない。 「おっすー、ポチ」 毒きのこは俺をポチなんてふざけた名前で呼ぶ。理由を聞いた所、昔飼っていた犬に顔がそっくりで、性格もうり2つなんだって。馬鹿らしい事をペラペラと教えてくれた。 「これ、お姫様がお前に」 「あぁ、あの二重人格ちゃんが?俺さ、あの子嫌いなんだよね。ほんと、性格悪いから。」 お姫様も毒きのこが嫌いだって言っていた。 そんな言葉は胸にしまって、適当に相槌をついた。毒きのこは汚れた手のまま封筒を破いて中の書類に目を通す。 「毒きのこって、思考はクソみたいだけど。頭は良いし運動も出来るし良いよね」 「だって俺、アルファーだし」 「……まじ?」 「うそ」 驚いた俺を見て、毒きのこはまた腹を抱えて盛大に笑い転げる。そんな毒きのこに腹が立って、足をグッと踏んでやった。 「いったいなぁ、もう…ごめんって」 「毒きのこの噂、本当なの?ベータのクラスにオメガとアルファがいるってさ」 「それは本当」 さっきまでの笑顔はどこかに消え、毒きのこは俺を見つめてそう言った。 何故か分からないけど、この噂が本当なんだと思ってしまって、俺はそれ以上の事は言えなかった。 アルファとオメガなんて、ベータの俺からしたら特別に非現実な世界の話だ。 2つとも、小さい頃から現実だけど非現実の話であって、だから気にした事なんて無かった。 同じ学校に通っていたとしても、クラスはハッキリ分かれているし。 アルファの凄さも、オメガがの辛さも俺にはさっぱり分からない。 そんな非現実の人間が、ごく普通の一般人と生活をしているなんて。 人生何があるか分からない。

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