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話)そっち?
僕には幼馴染が2人いる。りょーちゃんとひーちゃん。
りょーちゃんはちょっと俺様で自分勝手で横暴で、でも手を引っ張って僕を導いてくれる。
ひーちゃんはりょーちゃんとは真反対で、優しくて気が利いて僕が泣いたらいつも慰めてくれる。
僕達は幼馴染。いつも一緒に遊んで、いつも一緒におやつを食べて、いつも一緒にお昼寝した。小学生までは…
中学生になって、りょーちゃんは変わった。女の子と付き合うようになった。
僕はりょーちゃんのことが好き。
恋愛的な意味で好き。ただそれは、悲しいことにりょーちゃんが彼女を作ってから気付いたことだった。
今日も今日とて、飽きずに眺める。昨日はふわふわパーマの彼女だった。一昨日はセミロングの彼女。その前はショートな彼女。今日はどんな子だろう。
眺めるーーー
眺めるーーー
眺めるーーー
「ははっ。笑える。」
年に一回。りょーちゃんは何を思っているのか、男の恋人を作る。一眼に憚らず手を繋ぎ笑い合う2人。ふわふわしてて背の低い男の子。とても、幸せそうだ。
初めて男と付き合ったりょーちゃんを見て、とても悲しかったし、ショックも大きかった。だけど、同時にりょーちゃんは男も恋愛対象になるのだと喜んだ。2人が別れて、僕はりょーちゃんに告白した。でも、帰ってきた言葉は…なんてことない。
「俺、お前は弟にしか見れない。お前が今の言葉を取り消すなら、忘れてやる。」
酷い男だ。僕は涙を抑えながらコクリと頷いた。そこから、僕はりょーちゃんに想いを伝えていない。
憎いよ、憎い。僕は告白さえ許してもらえなかった。一瞬でいいから付き合ってみたい。キスしたい。愛していると彼の口から聞きたい。のに…、だめだ。許されない。それは伝えてはならない想い。
「また、泣いてるの?」
「ひーちゃん。」
「あいつのせい?」
窓の外。手を繋ぐ2人。ひーちゃんは僕の涙を掬ってくれる。いつもみたいに。抱きしめてくれた。
「ねぇ、あいつに一泡吹かせてやってみない?」
「ひーちゃん?」
「俺と付き合って。あいつに思いやらせてやろう。思われるのは当たり前じゃないんだってさ。」
「嘘で、付き合うってこと?」
そう…。ひーちゃんはにっこり笑って頷いた。
騙すなんてそんなことしたくない。
ー本当?
僕はりょーちゃんが好きだから。
ーでも振り向いてくれない
ひーちゃんにもそんなの悪い
ー提案したのはひーちゃんだよ?
りょーちゃんが話してくれなくなるかも
ーでも、僕以外の男と付き合うりょーちゃんなんてみたくないよ 今更だ
僕は、ひーちゃんの提案に乗った…
朝、迎えに来てくれたひーちゃんと手を繋ぎ登校する。緊張でドキドキ胸が高鳴っている。手汗、かいてないかな…。
「緊張してる?」
「し、してないっ。」
「大丈夫。きっとうまく行く。」
ふっと綺麗に笑ったひーちゃんはとても綺麗だった。
教室に入っても僕とひーちゃんは手を繋いだまま。自ずと周りが騒ぎ始めた。
「お前ら、その手、どうしたの?」
「俺ら付き合うことになったんだ。まぁ、そういう事だから。」
「大ニュースじゃん。おめでとー。でも、あんまりイチャイチャすんなよ。」
粗方、からかわれた後、りょーちゃんが教室に入ってきた。
ひーちゃんは僕の手を引っ張り、りょーちゃんの前に連れて行く。
「俺ら、付き合うことになったから。」
「は?」
「まぁ、お前の事だから関係ないと思うけど、あんまり近寄るなよ。」
りょーちゃんは驚きを隠せないのか、目を見開いている。ひーちゃんは僕をギュッと抱きしめて、ちゅっとキスをした。
「ふぇ?ひ、ひ、ひーちゃん⁉︎」
真っ赤になる僕にひーちゃんはにっこりと笑う。ただ、耳元でごめんと呟いた。僕はひーちゃんの事で頭がいっぱいいっぱい。
だから、りょーちゃんが今どんな顔をしているかなんてそんな事全く考えもしなかった。
僕とひーちゃんの関係はそろそろ1ヶ月になる。嘘の関係だけど、映画やカラオケに行ったし、登下校は手を繋いで一緒に帰った。
今日のひーちゃんは少しボーッとしていた。心なしかいつもより頬が赤く、体温もあったかい気がする。
案の定、ひーちゃんの家に連れて帰って熱を測ると、38.5度。かなりの高熱にあたふたするも、ひーちゃんのお母さんに学校に行きなさいと促され、後ろ髪を引かれる思いで学校へ向かった。
放課後。早く帰ってひーちゃんのお見舞いに行かなきゃと急いで帰る準備をする。しかし、ぐいっと誰かに腕を掴まれた。
「りょーちゃん?」
「何で、今日学校遅れてきた。あいつか?あいつとヤったから遅刻したのか。」
「りょーちゃん、腕、痛いよ。」
「答えろ。くそっ、何で俺が…。お前はっ、お前は俺の事好きなんじゃないのかよ。」
「りょーちゃん?」
りょーちゃんの様子がおかしい。なんか変だ。怒ってる?
「ははっ、くそ…。」
「りょーちゃん何?どうかしたの?僕、ひーちゃんのお見舞いに行かなきゃ…。」
「あいつの名前を言うなっ。」
「りょ、りょーちゃん…。」
「行くな。行くなよ。」
「ごめん、りょーちゃん。」
「あいつが、あいつのことが好きなのか?」
好き?分かんない。でも、最近ひーちゃんといるとドキドキした。ひーちゃんが熱を出した時心配で心配で仕方がなかった。そっか。僕、ひーちゃんとずっといたから…。
「うん、僕、ひーちゃんのこと好きみたい。じゃあ、僕行くね。」
「俺の入る隙はないってか。…今になって後悔しても遅いか。」
りょーちゃんの呟きは僕の耳には届かなかった。ただ、ひーちゃんとほんとうの恋人になりたい。それだけが頭を占めた。
ひーちゃんは僕のこと好きじゃないかも。でも、自分の気持ちちゃんと伝えたい。
ひーちゃん家まで走って、おばさんに許可を貰ってひーちゃんの部屋に入った。
「ひーちゃん、大丈夫?」
「…風邪、うつるから帰って。」
「ひーちゃんの風邪ならうつってもいいよ。それに、僕ひーちゃんに伝えたい事があるの。」
「俺がいない間にあいつに告白でもされた?それを伝えにきたの?」
「ち、違うよ‼︎僕、僕…ひーちゃんの事好きなの!」
言った。ついに僕、言っちゃった。ひーちゃんに告白しちゃった。
「ははっ、夢かな?都合のいい夢でも見てるのかな?」
「夢じゃないよ。僕、ひーちゃんが好きなの。」
「あいつが好きなんじゃないの?」
「僕、ずっとひーちゃんと一緒にいてりょーちゃんのこといつのまにか吹っ切れてた。ねぇ、それより僕、自惚れてもいいかな?ひーちゃんが僕を好きだって、思ってもいいかな?」
「…やっぱり夢かなぁ?」
「夢じゃないよ‼︎」
僕はひーちゃんの唇に自分の唇を押し当てた。
「ね?」
大胆になり過ぎかな?ドキドキしてひーちゃんの顔を見ると腕ごと引っ張られた。どさっとベッドに落ちる。
ぺちゃぺちゃと唾液が絡み合う音が部屋中に広がる。大人のキス。僕とひーちゃんの大人のキス。そのまま、僕らは一緒に倒れるようにベッドに沈んだ。
「ゴホゴホ」
「ごめん、俺のせいだよね。」
「ううん、だいじょーぶ。」
喉がイガイガする。あのまま2人で眠って、起きたら喉が枯れてた。完全にひーちゃんの風邪をもらった。でも、ひーちゃんは少し嬉しそう。
「夢じゃなかった。」
「うん。ねぇ、ひーちゃん…。」
「ん?ああ、愛してるよ。ーー」
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馬場が読んだ小説。俺様とくっつくと思ってたのに…と思っていたらしいが、意外といつも脇役になる優男とくっういてなんだかんだで結局満足いったとかいってないとか。
ただ、その後日別の小説を読んでまた深夜に六条に電話したらしい。
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