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0 再び

ーー祐介さん 名前を呼ばれた気がして祐介は目を開ける。 「真也」 ーー祐介さん 「真也……お前、なんで……」 ーー祐介さんに会いたくてずっと……ずっと会いたくて ポタポタと祐介の頰に落ちてくる雫が、真也の濡れた髪から落ちる雨なのか、それとも涙なのか、分からないまま祐介は冷たいシャツの腕をぎゅっと掴んだ。 「俺も会いたかったよ。ずっと……ずっとお前を待ってた」 冷たい真也の唇が祐介の頰に触れる。 そっと触れては名残惜しそうに離れていって……また触れる。 その切ない焦ったさに根を上げた祐介は、自ら唇を真也のそれに押し付けた。 それを待っていた真也の唇は、薄く開き(よろ)んで祐介の舌を迎え入れた。 そのまま互いの存在を確認し合うみたいにふたりは口付けに溺れていく。 もっと触れたくて、触れて欲しくて、なのにシャツを脱がす手は震えて上手く動かない。 「真也……お前が欲しいよ」 一瞬、泣き笑いするみたいに真也の表情(かお)が歪んだ。 「お前も俺が欲しいって、言ってくれたのになんでそんな表情(かお)するんだ?」 人は嬉しい時にも泣きたくなると教えてくれたのは祐介だった。 「なぁ、知ってるか?」 ーー七夕に降る雨は織姫の嬉し涙なんだって ーー嬉しいから ーー祐介さんに会えて嬉しいから 「そっか、なら、笑ってくれ。俺はお前の笑顔が大好きだ。お前が傘を貸してくれたあの日からずっとお前の笑顔を想って生きてきた」 笑えと言う癖に祐介の言葉は真也を泣かせる事ばかりだった。 「真也、好きだよ。お前を ーー愛してる 狭いソファの上で絡ませ合った脚が祐介の熱を真也へと伝えていく。 ーー祐介さん 祐介の愛した黒曜石の瞳が揺れていた。 ーーオレもずっと ーーずっと……ずっと愛してた その夜ふたりの流がした嬉し涙は、雨になって降り続けた。 まるで束の間の逢瀬を隠すように優しく優しく降り続け、やがてふたつの心と身体は溶け合って、雨の中でも煌めくひとつの(きせき)になった。 ーーずっと愛してる                              了

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