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第1話
俺の村は人里離れた山の奥にひっそりとある。農作、酪農をやっている家が大半を占め、必要な物は物々交換し、村にない甘味物や反物などが欲しいときは遠くの町に食材などを売り、そのお金で買っていた。
今年は天災が続いた。急な大雨による土砂崩れ、何日にも続く雨による作物の根腐れ、追い討ちをかけるように昨日地鳴りが起こり、天変地異が起こるのではないかと村のみんなが慄いた。このままでは飢饉になり、苦しくなると。
村の大人達は子どもが寝たあと、集会を開いた。今後どうしていくか、対策はどうするのか。満場一致で決まったのは、村の守り神である山神様に人身御供を捧げること。
誰を捧げるか。若く、容姿も端麗な者。しかし自分の子どもは手離したくない。その条件下で1人の男子の名が上がった。
ぱっちりとした二重に艶のある黒髪、張りのある肌で見目麗しい。毎日農作業もしており、健康体である。両親は原因不明の高熱で6年前に亡くなっており、身寄りもない。人身御供として最適であった。
「お告げだ。神への捧げ者としてお前が選ばれた。」
「….自分ですか…?」
翌朝、少年に集会の結果がお告げとして伝えられた。天災はここ数十年なかったため、人身御供の話は昔話として聞いたことはあるがまさか自分がなるとは信じられなかった。
「みんなの命がかかっているのだ。お願いだ、頼む。」
村長や他の大人達も頭を下げた。大人が自分に対してこのような態度をとったのは初めてだった。
両親が亡くなった後、両親の死因が原因不明であったことから気味悪がれ、村の人からは距離を置かれていた。物々交換も渋られる程で、細々と自分で野菜を育て食べていた。大人の態度は子どもも真似をし、積極的に自分と関わる者はいない。孤独を感じ、生きている意味を見出せなかった。
どうせ生きていたって何も楽しいことはない。自分の命で村が助かるのならいいことだ。
「頭を上げてください。…自分でよければよろしくお願いします。」
自分は人見御供になることを受け入れた。
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