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第2話

「この一本道の先に山神様を祀っている祠がある。祠の鍵は開けておる。中に入り、山神様が来るのを待つのだ。」  お告げを受け入れた後より、身を清められ、捧げ者が着用する絹で作られた真っ白の長襦袢を着た。首や頭には赤や黄色など彩り豊かな乾燥した木ノ実で作られた輪を着ける。  夜には今までにない豪勢な食事で、村全体で豊作を願う予祝を行った。何度か食事を促されたが、食事は喉を通らず、お茶で口を潤した。  そして祭りが終わり、午後零時。一本の松明を渡され、村人に見送られながら祠に向かって山道を歩いていった。      村人達が持っていた松明の火も見えなくなり、自分が持っている松明の火だけが辺りを照らしている。  風が吹くたびに葉が擦れ、森全体がざわざわとする。自分の足音が大きく聞こえ、一寸先も闇であり、徐々に恐怖が強くなる。 (祠まであとどれくらいなのだろう…。熊がでたりしたら自分はどうすれば……。)      ガサガサっと近くで音がした。    身体が強張り、足を止める。風ではない。何かがいる。松明の光で寄ってきてしまったのか。  息をする音までも大きく感じ、気づかれないようにゆっくりと呼吸をする。  再度ガサガサと音がなり、草むらの中から金色の目が光ったのが見えた。   「ぐるるる……」     唸る声も聞こえ、身体が竦む。足が震え、全身から汗が噴き出す。 ガザっと茂みから狼が顔を出した。    (お、狼だ……!)  噛まれるかもしれない。肉食動物なので、食べられてしまうかもしれない。  どうなってもいいと思っていたが、いざ死に直面すると恐怖でただただ慄いた。    (逃げなきゃ……)  でもどうやって?  息が苦しい。静かに息をしないといけないのに、浅く速い呼吸しかできず、徐々に呼気ができなくなった。松明の光があるはずなのに、徐々に視界が暗くなり、立っていられなくなる。松明を持っておくことができず、地面に落とした。 自分も意識を保っていられず、意識を手放した。

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