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第5話(柊くん)
「今の、W(ダブリュー)の葵くんだったよね」
「マジだったんだ。柊くんのファンて。めっちゃ、音楽番組とかで名前出されてたけど、マジだったんだ。え、マジだったんだ」
狭い会場内がざわついている。
そりゃあ、そうだ。デビュー以来、ずっとトップを走り続ける男性2人組アイドルが、普通に、僕なんかの握手会に並んでいたんだから。
僕だって、興奮している。
「よかったね、柊くん! ずっとファンだったんでしょ!」
「は、はい」
ニートで引きこもりの僕を、こうしてまた外に出してくれるきっかけをくれたのは、Wの曲だった。その中でも圧倒的な歌唱力で、サビを歌い上げる葵さんが好きで、葵さんのようになりたくて、『歌ってみた』を始めた。
そんな人がまさか、本当に僕なんかのファンでいてくれたなんて。
握手でふれあったところが熱い。
ふわふわと、今でも夢の中にいる心地がする。
「僕にとっての神様なんです」
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