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第2話

俺のお兄ちゃんは、賢くて運動もできてとても優しい。 でも、それができるのはお兄ちゃんが毎日努力してるからだって知ってる。 それをぜんぜん威張らずに、俺がたずねると笑顔でなんでも答えてくれる。 そんなお兄ちゃんが俺は大好きだ。 そんなお兄ちゃんはみんなに好かれるはずなのに。 母さんが愛してるのは俺。 父さんがパーティーに連れていくのは俺。 メイドや執事が可愛がるのは俺。 初めは弟だし当たり前くらいに思っていたそれに、違和感を抱き始めたのはいつだっただろう。 「お兄ちゃーん。ここわかんない」 数学の教科書とノートをもって、お兄ちゃんの部屋を訪れる。 ほとんど物がなくて、生活感がない部屋。 でも、お兄ちゃんの匂いがして落ち着く。 「もう……。ここに来たらまた、お母さんに怒られるよ」 「そんなの知らない。家庭教師の人よりお兄ちゃんの方が教えるの上手いし」 「せっかく来てもらってるのに」 お兄ちゃんは苦笑いしながら、解き方を教えてくれた。 「うん!分かった!」 「ふふ、よかった。こなつは飲み込みが早いから教えがいがあるよ」 お兄ちゃんは少し腕を伸ばして俺の頭を撫でた。 1歳差だからか、とっくに身長は追い抜かしている。 お兄ちゃんに勝ってる唯一のところだ。 『こなつ様、奥様がお呼びです』 ドアの外から声がかかった。 ばれないように来たのに、いつ知ったんだか。 「ほらこなつ、いっておいで」 「はぁ……めんどくさ」 ゆっくりと部屋を出て、母さんがいるリビングに向かった。 「こなつ、またあの人の部屋に行っていたの?」 あの人なんて呼び方。 お兄ちゃんは母さんのことなんて嫌いになってもいいのに、何もためらわず大切だっていう。 だから、仕方なく俺は母さんと話す。 「どうでもいいだろ?」 「どうでもよくないわ!あなたの事だもの。大丈夫?変なことされてない?」 「変なこと?兄さんだぜ?されるわけないだろ」 「できるだけあの人には関わらないこと。ちゃんと守って?お母さんはこなつのことを大事に思ってるから言ってるのよ」 「はいはい。もういい?」 無理やり話を切って、自分の部屋に戻った。 はぁ…… 3日ぶりにお兄ちゃんに会いに行ったのに、30分も一緒にいれなかった。 でも、これ以上頻繁に行くと父さんまで嫌な顔をするからめんどくさい。 ただお兄ちゃんに会いたいだけなのにな。 せめてお兄ちゃんがスマホをもったら、会わなくても話せるのに。

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