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第3話
朝、部屋に運んでもらった朝ごはんを食べて、お兄ちゃんより先に家を出て、学校に行く。
お兄ちゃんとは学校が違うから、会うことは出来ない。
お兄ちゃんから、俺に会いに来てくれたらいいのに。
たまに、お兄ちゃんはほんとは俺のことが嫌いなのかと心配になる。
そんなわけないって思うんだけど。
「こなつ様!おはようございます!」
車から降りた瞬間、一斉に声が響く。
慣れた光景にため息をついて、教室に向かった。
「お荷物お持ちします!」
「お菓子を作ってきたんです!」
飛び交う声を無視して、歩き続ける。
毎日無視し続けてるのに、よく飽きないよな。
まぁ、俺の家の力を手に入れようと思ったら、これくらいなんでもないのかもしれない。
1人も友達なんて呼べる存在がいない中、ぼんやりと過ごす。
そんな時、担任の声ではっと気を取り直した。
「今、なんて言った!?」
「え!?は、はい。再来月に行われる文化祭は明章高校と合同で行います」
お兄ちゃんの行ってる高校だ……
一応姉妹校だけど、今まではなんの関係もなかったのに。
「そのため、各クラスから1人ずつ実行委員を決めるのですが、立候補者はいますか?」
「俺がやります」
一瞬、教室がざわざわして、すぐに落ち着いた。
「他に立候補者はいませんか?__では、実行委員を決定しますね」
帰ってすぐに、お兄ちゃんに話したくなった。
昨日、会いに行ったばかりだとか関係ない!
執事に、部屋で勉強するから邪魔しないように伝えて、窓から外に出た。
木の枝をつたい、俺の部屋から1番遠いところにあるお兄ちゃんの部屋にたどり着いた。
窓をばしばし叩くと、机に向かって勉強していたお兄ちゃんがやっと気づいた。
俺を見て、ぽかんと口を開けたあと、般若みたいな顔になって急いで向かってくる。
「この馬鹿!怪我でもしたらどうするの!お父さんもお母さんも悲しむよ!?こんな危ないことするくらいなら、会いに来て欲しくない!」
「ご、ごめんなさい……」
久しぶりにお兄ちゃんに怒られた…
怖いけど、お兄ちゃんが怒るのは俺を大事に思ってくれてるからって分かるから、心から謝れる。
「もう絶対、危ないことはしないって約束して?」
差し出された小指に自分のものを重ねる。
「約束する。だから、これからも来ていい……?」
「ふふ、もちろん。こなつが会いに来てくれるのは嬉しいんだよ」
「それで、今日はどうしたの?昨日来たばかりなのに。何かあった?」
「うん、あのね。今年の文化祭、お兄ちゃんの学校と合同でやるんだって!それで、お兄ちゃんも実行委員になってくれたらいいなぁって」
お兄ちゃんはうーんと唸りながら考えてたけど、俺のお願いに根負けしたようだ。
「でも、他にやりたい人がいたらその人になると思うから。その時はごめんね」
「大丈夫!そんなめんどくさいことやりたい人いないって!」
「それと、学校で俺に会っても話しかけないでね。お兄ちゃんなんて呼んだらだめだよ?」
「……なんで?」
「約束してくれないなら、立候補しない」
理由はわからないけど渋々了承した。
とにもかくにもこれで、文化祭までお兄ちゃんにたくさん会える!
頭の中はそれでいっぱいだった。
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