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第22話
意識を取り戻した時、床にはぐったりとなっているお兄ちゃんがいた。
朧気に覚えている、淫らに哭いていた姿。
ずっとαだと思っていたお兄ちゃんが、Ωだった。
きっと、両親や執事たちのお兄ちゃんへの態度はそれが原因だろう。
Ωはよく貶されるから。
たとえ、長男だとしてもあとを継がせる訳にはいかないと考えたのだろう。
かわいそうな、お兄ちゃん。
カバンに突っ込んでいたスポーツタオルを濡らして、お兄ちゃんの身体を拭いていく。
何度か繰り返し、最後に自分の身体も拭いた。
抱っこして外に出ると、すでに外は真っ暗だった。
ひっきりなしになるスマホを無視して、ホテルに向かった。
ベッドに寝かせたお兄ちゃんは、ピクリとも動かない。
白くさらっとした頬に長いまつげ、真っ赤で小さい唇。
まるで人形のようだ。
これを、俺が汚した。
……俺のものにしたい。
はっと気が付き、お兄ちゃんの項を確認する。
「よかった……噛んでない…」
やることやっといてなんだとは思うけど、番になるならお兄ちゃんに好きになって欲しい。
番なんかに縛られた関係を、お兄ちゃんは望まないだろうから。
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