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第3話
ぐったりとその肢体をベッドに投げ打っていると、安里が手を拭いて汗ばんだ景の髪の毛を柔らかく梳いた。顔の見えない不安から、景は子猫のようにその手に擦り寄った。
「…安里…?」
「何?景。」
「疲れた…。」
はふ、と熱い吐息を漏らしながら、景は安里に甘える。安里はふふと笑みながら、景を労わった。
「お疲れ様。頑張ったね。」
「うん…。」
「もう、止めようか。」
ちゅ、ちゅ、と安里は景の頬や額に口付けを落とす。
「え、でも。」
安里の掌に、自分の頭を預けて景はぽつんと呟く。
「まだ、本番…。してない。」
それは小さくささやかながら、安里の耳にちゃんと届いたのだった。
「…無理してない?」
「無理なんて…、安里はしたくないの。」
「したいよ。したいに決まってる。」
「じゃあ、」
「待って。」
安里によって、景の目隠しのアイマスクが解かれる。景はぱちぱちと瞬きをして、瞳のピントを合わせた。そうして落ち着き改めて安里を見ると、安里は優しく微笑でいた。その笑みは柔く温かい、たんぽぽの綿毛のようにふわふわとしていた。
「目を見たくて。」
「うん…。僕も安里の顔が見たかった。」
「ごめんね、本当はSM…嫌だったでしょ。」
「…。」
「頑張ってくれて、ありがとう。」
そう言いながら景を抱き起して、安里は拘束していたネクタイを解いた。
「…あの、」
「うん?」
「もう一回、縛って。」
「!」
「最初は驚いたけど、別に…そんな悪く、なかった。」
「…本当?」
「うん。むしろ、刺激的?たまには?いい…かなって。」
「…じゃあ、もう少し…頑張ってみる?」
安里とのSMは痛く、苦しいだけではないと学んだ景はおずおずと控えめながら頷くのだった。
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