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Ⅱ
彼が唯一身に付けているものといえば、裾が解れたチュニックただひとつ。
そこから伸びている下肢は煤だらけで見窄らしい。
両足には鞭で打たれた生々しい傷跡が無数に散っていた。
木の枝と同じくらいの細い両腕には彼が逃げないよう、鎖が何重にも巻きつけられている。
そんな状態だからだろう。
数多くのコレクターたちが行き来する中、彼らはウェリーを物珍しい目で見るものの、顔をしかめて通り過ぎて行く。
その光景が気に入らないのは人買いだ。
「くっそ、売れねぇじゃねぇか!!」
彼はウェリーとは対照的なでっぷりとした太鼓腹を揺らし、腹癒せにすぐ近くの柱を蹴り飛ばした。
天上から無数の土埃が降る。
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