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 彼が唯一身に付けているものといえば、裾が解れたチュニックただひとつ。  そこから伸びている下肢は煤だらけで見窄らしい。  両足には鞭で打たれた生々しい傷跡が無数に散っていた。  木の枝と同じくらいの細い両腕には彼が逃げないよう、鎖が何重にも巻きつけられている。  そんな状態だからだろう。  数多くのコレクターたちが行き来する中、彼らはウェリーを物珍しい目で見るものの、顔をしかめて通り過ぎて行く。  その光景が気に入らないのは人買いだ。 「くっそ、売れねぇじゃねぇか!!」  彼はウェリーとは対照的なでっぷりとした太鼓腹を揺らし、腹癒せにすぐ近くの柱を蹴り飛ばした。  天上から無数の土埃が降る。

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