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Ⅳ
人買いのこれは今に始まったことではない。
鞭で叩かれないだけ、今日はずっとましだ。
けれども痛みは日に日に強くなり、その度に体は焼き付くような痛みを訴えた。
しかしそれ以上に痛むのは体ではなく、人として扱われないウェリーの心だった。
(痛い! 誰か助けてっ!!)
両親を失ってからというもの、日々奴隷のように扱われる心が苦しい。
けれども泣き叫ぶことはできない。
そんなことをすれば煩いと怒鳴られ、さらに酷い仕打ちが待っている。
だからウェリーはその目に涙を溜めて必死に歯を食い縛る。
大丈夫。今日という日を我慢すればいいだけのことだ。
ウェリーは自分にそう言い聞かせ、込み上げてくる悲しみや苦痛を追いやり、慰める。
そんな混沌とした世界が今日もはじまる。
覚悟していた時だった。
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