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「おい、それはいくらだ?」  ふいに一人の男が人買いの前で立ち止まった。  ウェリーは涙袋に溜まった涙を手の甲で拭うと、目の前に現れたお客を見上げた。  背は百九十はあるだろうか。ダークブラウンのジュストコールに綺麗な模様が施された草色のジレ。清潔な白のチュニック。  そして何より、ワイン色のショースを纏ったすらりとしたその長い足。  身形からして男は貴族だろう。  しかも侯爵クラス。  年の頃なら三十ほどで、顔立ちはーー。  ウェリーはそこまで彼を見定めると、ごくりと唾を飲み込んだ。  彼はとても美しかった。  襟足までの黒髪には象牙色の肌がとても映える。  高い鼻梁に薄い唇。アメジストの鋭い輝きを持つその目は威厳に満ち溢れ、尖った顎は厳格さを現していた。  彼が相手ならばたとえ神であろうとも恋をするに違いない。世にも美しい美貌を持っていた。

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