7 / 21

 人買いはふいに話しかけられ、固まっている。  ぱっくりと口を開け、放心状態だった。 「そいつの値段だ。いくらになる?」  話は一向に進む気配がない。  業を煮やした男は苛立ちをあらわにして、もう一度人買いに尋ねた。 「へ、へぇ~。四十デュカートですねぇ」  人買いはやっとウェリーを手放せるとさぞや安心したのだろう。  両手を揉み、体を丸めて男を見上げる。  しかし、人買いの言葉に反応したのはウェリーだった。  人買いが言った値段は換算すると二年分の食費に価する。  いくらなんでも自分にはそれだけの価値はない。 「嘘です!! さっきまで十デュカートって言って!!」 「うるせぇ! 孕むばかりしか脳がない奴が口出しするんじゃねぇよ!」  ウェリーの口答えが気に食わない人買いは、再び長い髪を掴んだ。 「いっ、あっ!」  恐ろしい力で引っ張り上げられ、鋭い痛みがウェリーを襲う。  華奢な腰が宙に浮いた。

ともだちにシェアしよう!