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Ⅵ
人買いはふいに話しかけられ、固まっている。
ぱっくりと口を開け、放心状態だった。
「そいつの値段だ。いくらになる?」
話は一向に進む気配がない。
業を煮やした男は苛立ちをあらわにして、もう一度人買いに尋ねた。
「へ、へぇ~。四十デュカートですねぇ」
人買いはやっとウェリーを手放せるとさぞや安心したのだろう。
両手を揉み、体を丸めて男を見上げる。
しかし、人買いの言葉に反応したのはウェリーだった。
人買いが言った値段は換算すると二年分の食費に価する。
いくらなんでも自分にはそれだけの価値はない。
「嘘です!! さっきまで十デュカートって言って!!」
「うるせぇ! 孕むばかりしか脳がない奴が口出しするんじゃねぇよ!」
ウェリーの口答えが気に食わない人買いは、再び長い髪を掴んだ。
「いっ、あっ!」
恐ろしい力で引っ張り上げられ、鋭い痛みがウェリーを襲う。
華奢な腰が宙に浮いた。
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