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第1話
「ゴシュジンサマー」
ぶほっと呪術師がコーヒーを吹く。慌てて口元を拭いながら男の方を振り向いた。
「なんですかい急に?!変な雑誌でも読みました?」
「だって俺、先生の使い魔になったんだろ?ちゃんと呼ばねえとまずいかなって」
タレ目がちだが意志の強そうな目。
並の男が見上げるほどの巨体。
鍛えられた逞しい体は簡素な綿の上下に少し大きさが足りないエプロンを身に着けていた。
男は手際よくテーブルに朝食のスクランブルエッグの乗った皿を二枚置きながら口を尖らせる。
その唇が早朝、ベッドでの濃厚なキスの名残でポッテリしているのを見つけて呪術師は若干動揺したが、それを隠す為にわざと眉間にシワを寄せた。
「使い魔と主、たしかに。でもだからって『俺と旦那』の関係が無くなったり変わったりしたわけじゃねえですからね。俺の事はできればいつも通り呼んでくだせえよ。アンタだって俺に冷酷無比な主であることを望んだりしねえでしょう?」
「でも先生、えっちする時偶に呼ばせるじゃん?」
「げほっ……それは、そういう趣向ですよ。旦那もわかってるでしょうに」
「そりゃ、まあそっか」
あっはっはと笑いながら自分も向かいの席に着く男。
その声は大きいが不思議と呪術師の耳には不快ではない。
「なあ、先生。ところでちょっと話があるんだけどさ」
男はエプロンを外してフォークを手に取りながら少し言い難そうに尋ね直す。
「……まほうの修行は修行で頑張るけど、使い魔になって魔力フェロモン制御の心配しなくていいならそろそろ前の職場にもどっていいか?」
体調が戻ったなら是非復職してほしい、バイトでも良いと男の元職場から知らせが来たらしい。
「元の職場……村の警備業ですかい?」
「ああ、職場の皆にも心配かけちまったし、少しでも役に立ちてえんだ」
確かに男が魔力フェロモンだだ漏れになる心配はとりあえず無くなった。呪術師が主となって男の魔力を制御しているからだ。だが、だからといって今まで基本籠の鳥でかわいがっていた恋人が他の男の目に触れる機会が増えるのはちょっと、いや、かなり嫌なのが呪術師の本音だ。
(ずっと俺だけの旦那でいて欲しいんですがねえ)
しかしそんな狭量な事は口には出せない。
どうしたものかと、と腕を組む。
だが男は手をあわせて粘った。
「いい加減暴れねえと体がなまっちまう!繁忙期討伐の助っ人バイトだけでもいいからよ!」
大きな体をできる限り丸めて手を合わせる男。
(うっ)
その姿があんまりいじらしく、愛らしくも必死に見えて呪術師は渋々頷いてしまった。
「……繁忙期、だけですぜ?」
「おう!!」
男のひときわ大きな声が辺りに響いた。
◇
翌朝、早速男は職場へと向かう為に支度をしていた……なぜか呪術師と共に。
「子供じゃねえんだ、付添いなんていらねえよ先生」
仕事道具の戦斧を手入れしながら男がぶうたれる。
「付添いと言うか、手前の仕事で警備事務所にちいっとばかし用事があるんですよ」
「まじで?」
「本当本当」
「このタイミングで?」
「偶然偶然」
「それじゃあその手土産の菓子折りはなんだよ。仕事にしちゃ高級品すぎねえ?」
男が指差す菓子折りは昨日の今日でどうやって入手したのか、男でも知っているような王都のブランド限定菓子だ。
「そりゃ、仕事とは言え長期間旦那を独り占めしちまいやしたからね。気は心って言うでしょう?同性の嫉妬は怖いんですぜ?」
カラカラと笑う呪術師に男はまだ納得いかない顔だ。「ふうん?」と首をかしげる。
「でも事務所に用事ならこんな朝早くなくてもいいんじゃねえの?」
「いいからいいから。ほら、支度してくだせえ。俺はもう大体済みましたよ?」
「うーん、ああもう、わかったよ。しょうがねえなあ」
頭を掻きながら渋々男は身支度に戻った。口では呪術師に敵わない。
それに今日から早速現場に出る予定なのだ、支度は早いに越したことはなかった。
自宅から持ってきた麻と魔混紡綿の丈夫なズボンを履いて、久しぶりに引っ張り出した仕事用シャツに袖を通す。
朝、暖房が完全でないので少し冷える。
男のツンと尖った乳首にシャツの薄い布が引っかかっているのを見つけて呪術師の喉がなった。
魔力フェロモンが抑えられているにもかかわらず男が色っぽく見えるのは気の所為ではない。毎夜自分が育ててきた肉体が美味しく熟しつつある事に密かに歓喜しながら平静を装って呪術師は朝のコーヒーを啜る。
しかしこの無防備な笑顔と肉体が今日から他の男どもに晒されると思うと、……呪術師はまだ見ぬ獣達に嫉妬を抑えられないでいた。もっともそんなこと男には言えないが。
「ちょっと薄着じゃねえですか?」
「そうか?でもあんまり着込むと動きにくくなるし。汗かいたらどうせ脱ぐし」
「脱ぐ?!だめだだめだ!」
慌ててカップを置き否定する。だが男は呑気なままだ。
「先生は気にしすぎなんだよ」
「旦那が無防備すぎるんだ……!大体なあ」
ここでいつの間にか歩み寄っていた呪術師の手が男の腰に伸びた。
「あンっ……?!」
冷たい呪術師の指が男の肌をなぞる。びくりと反応してしまったことが恥ずかしくて男は息を呑んだが、そんなこと呪術師にはお見通しだ。
「こんな簡単に肌に触れられちまうような服装、破廉恥でしかたねえ。さらに汗かいたから脱ぐ……?」
下から手を差しこみ、男の割れた腹筋をたどって下胸のラインに爪を滑らせる。
「ちょ……っ先生!」
しかしかまわず呪術師は男の胸に指を伸ばした。
昨夜もたっぷりかわいがった乳首がぷるんと弾かれる。愛らしくもいやらしい器官が快楽に震えた。
「んっ!あぁっ、今は……だめ……っ」
男が抗議の声を上げるがその色はすでに淫色に染まりかけている。乳頭が勃起しているのも気の所為ではあるまい。閉じかけたシャツのボタンを暴く。朝日に照らされ浮かび上がるのは柔らかな桜色。それはまるで犯されるのを待ちわびる処女のようだった。
「こんなにイヤラシイおっぱいを人前に晒す……?冗談じゃねえよ旦那」
乳輪を中指で辿って首筋に後ろから鼻を埋める。石鹸の清潔な香りと男自体のレザーのような甘い匂いに目を閉じた。この甘美な存在は自分だけのものだと念じて首に吸い付く。
「あぁっ!せ、先生……っ」
男は後ろから回される呪術師の腕に抗おうと必死でもがくが、一挙手一投足が男の体を甘く染め誘惑するので思うようにいかない。シャツはすでになく、ズボンもいつの間にか下ろされている。全裸よりも淫靡な暴かれた男の姿に呪術師の嗜虐心がゾクゾクと舌なめずりをする。
呪術師の左腕が熟した乳首を嬲り、右腕が器用に片手で男の男根を掴みだす。すっかり勃ちあがった巨根に長い指を絡めて鈴口を抉った。
「ひぃっ……あぁ……だめだ……時間が……っ」
「旦那が張り切って早起きしたからまだまだ余裕たっぷりですぜ……?ああ、今から行ったんじゃあ早すぎて先方にもご迷惑だ……なあ、旦那……?」
耳の裏をゾロリと舐める。
「はぁん……っ」
堪らず傍らのテーブルに手をつく男。ふわっと風圧を感じるほどに甘い香りが湧き上がってきた。
(まったく、使い魔契約でできたての回路からダイレクトに淫に染まった魔力が流れてきやがる……それだけじゃねえ。魔力フェロモンは完璧に封じたはずなのにいやらしく誘う香りがプンプン漂ってねえか?これが旦那自体の匂い……?!しかも旦那は無自覚だ……。なんてぇポテンシャルだよまったく)
男の乳首からは感じる事により白濁のミルクが溢れ始めヘソまで滴り、そして同時に股間の一物がちゅくちゅく音を立て先走り液で自身を濡らしていく。
「上も下もトロトロじゃねえですか。かわいそうに。苦しいでしょう?」
背中を丸めこらえる男がうわ言のように呪術師を呼ぶ。
「先生……せんせい……っ」
「ここにいますぜ。アンタの俺だ」
呪術師が愛おしげに男の背中に唇を落とす。
「これから仕事なのに感じちまってるのかい?」
「だって……ぇ。あっ!」
尻の谷間を指でなぞられ、秘部がびくりと反応する。はやくここに欲しいと全身がわななく。だが呪術師は嗤う。
「昨日もあんなに可愛がってやったのに。旦那は本当に欲しがりだなあ」
「先生……たのむ……はやく……っああっ」
ゆっくり指を二本差し込まれヌチュヌチュ粘膜をかき回される。昨夜の名残でまだ柔らかい肉壷はもっともっとと強欲に絡みついてきた。根本まで差し込み、そして存分に前立腺を弄ぶ意地悪な指に男が背を反らして悲鳴をあげる。
「あぁあっ!ちがうぅっ、それじゃなくて……っ!ああっ、んんっ!コリコリだめぇ!!」
男が腰を無意識によじる。
「そうかい?アンタだいぶ良さそうだけどねえ」
根本をぎゅっと抑え込まれた男の逞しい男根がびくびく痙攣している。イキたいのに許されず先走りの涙を流しながら震えていた。
筋肉で武装された男の背中を舌で味わいながら呪術師が囁く。
「今はだめなんだろ?」
「あぁん、い、意地悪……すんなよぉ……っあぁ……っ」
先走り液でじゅっぽじゅっぽと扱かれる男根。だが後ろでイク歓びを知ってしまった身には苦痛でしかない。甘い刺激が全身の神経をビリビリ灼いていく。懇願の嬌声が止まらない。テーブルについた両手が震える。だが呪術師は容赦しない。
「だーめ。仕事から帰ってきたら沢山可愛がってやりやすよ」
言うなり手の動きを早める呪術師。
「あっあっあっだ、だめっ!いっちゃう!いっちまうからぁ……!」
ぐっちゅぐっちゅとリズムペースが上がっていく。このタイミングで泥濘んだ秘部を貫かれたらどんなに気持ちよいだろうか。男が求めてやまない呪術師はしかし冷徹な声のまま言いつける。
「だから、今夜かわいがってほしかったら人前で裸になるなんて言ったらだめですぜ?」
「あぁぁ!!」
男は結局そのまま二回、前だけでイカされた。
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