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狼というには可愛すぎるわけで①
週末金曜日。
社会人の人たちは華金だなんだといって居酒屋に入ってはやたら羽目を外して金曜日の夜を謳歌するわけなんだけれど、楽しい人間がいりゃ、逆に酒やらつまみやらの提供に忙しく居酒屋の中を駆け回る人間もいるわけで。
当初の予定では、11時までのはずだったシフトが、2時間オーバーの午前1時に漸く仕事あがり、残っているスタッフに後ろ髪ひかれながらも居酒屋を出たのは1時半。
くたくたになった体に鞭打ちつつ、兎に角何か早く腹に入れたかったからコンビニでおでんを買ってとりあえず腹を満たそうと公園のベンチに向かうと、どうやら先客がいた。
見た目は金髪で、いかにも不良ですと言わんばかりの容貌で、がたいもよく、顔も精悍で整っているため下手したら大学生の俺よりも年上に見えないこともないが、着ている学ランを見る限り高校生だろう。
ベンチになんとか座っている少年は、傷だらけで出血しているところもままあった。
傷だらけの未成年が深夜にこんなところにいるなんて知ったことじゃないと思えるくらいにはお腹すいているんだけど、そんな未成年の隣でおでん食べて帰るなんてする度胸もないわけで、仕方なく話しかけることにした。
「こんばんわ。」
俺の存在に気が付いていなかったのか、少年は驚き、しかし俺の姿を認めると、睨み、うるせえと吐き捨てた。
「君、高校生?」
「しらねえ」
「家はどこ?」
「しらねえ」
「今日泊まる場所はあるの?」
「うるせえ」
しらねえ、うるせえの一点張りの少年に、業を煮やした俺は強引に少年の手をとり帰宅することにした。
後ろで少年がわめいていたが、おそらく傷だらけで体力もなかったらしい少年。
途中から静かに、しかし、不機嫌な様子は隠すことはなかった。
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