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狼というには可愛すぎるわけで①
「ちょっとそこで座ってて。」
機嫌が直らない少年を無理矢理家に連れ込み、温かいお茶と救急箱を用意する。
救急箱は、一人暮らしをする為にばあちゃんが何があるかわからないからと押し付けられたものだけど、まさか使うことになるとは思いもしなかった。
本当になにがあるかわからないもんだな、と一人微笑む。
救急箱をもってくると、少年は露骨に嫌な顔をした。
「そんなんいらねえよ。」
「ちゃんと消毒しないと膿んじゃうだろ。ほら、前に怪我したところ膿んじゃって…痛そう。」
「別に痛くねえし。」
「まあまあ、そう言わず。」
そんなことをいいながら、消毒液を傷口にあてると、少年は至極痛そうな顔をした。
なんだ、可愛いところもあるじゃないか。
一通り傷口の手当をしてしまうと、安心してしまってか空腹が甦った。
もう夜中もいいところだけど夜ごはんにしようと、 買ったおでんを探す。
「…あれ。」
「なんだよ。」
「おでんがない。」
「しらねえよ。」
「…」
「…」
「あ、公園に忘れてきたかもしれない…」
「………あんたバカだな。」
「最悪だ…。」
自慢じゃないが、俺は自炊なんてやったことないし、できるはずもない。
「もう一回コンビニ行くしかないのか…。」
先ほどまで不機嫌だったはずの少年はあきれ顔で、一応年上の俺としてはもの悲しい。
そんな顔をされるくらいなら、不機嫌な顔された方がましだ。
悲しみにうちひしがれていると、少年はおもむろに、台所へと向かっていった。
「あんた、冷凍ご飯あるじゃねえか。」
「冷凍ごはん?」
なんだそれは、と少年のもとへ向かうと冷凍室にかちこちのごはんの塊が。
そういえば、何日か前うちでゼミ仲間と鍋パしたときにご飯を炊いたが、全部食べたか捨てたもんだと思っていた。
まさか俺がご飯を炊くなんてできるはずもなく、ゼミ仲間のやたら料理好きな友達に任せっきりだったのだけれども。
そいつがご飯を凍らせたのかと感心していると、少年は冷蔵庫の中を見ながらフライパンを用意しだした。
「あんた、部屋で待っとけ。」
そう言われ、言われるがまま部屋で待つこと5分もしないうちに、台所から美味そうなにおいが漂ってきた。
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