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狼というには可愛すぎるわけで③
「前田!お前、武川さんとなんで仲いいの?」
昨夜、真也と小洒落たレストランで思う存分飯を食って満足して帰ってきた次の日。
小河が学校に着くなり、俺のところに詰め寄ってきた。
好青年風な見た目とはそぐわず、滅多なことで朝から学校に来ない小河がホームルーム前に教室に入っているなんて珍しく、俺だけじゃなく周りのクラスメートも鉄砲玉喰らったような顔をしている。
そんなことは兎も角、珍しく朝一番に現れた小河が聞きたかったことは
偶然にも俺が小河に聞きたかったことと同じだった。
「小河こそ、真也と知り合いなわけ?」
そんなこと真也に聞けばいいことだとはわかっているが、なんとなく真也に聞くのは癪に触る。
「知り合いだなんて恐れ多い!てか、知っててもらってて奇跡だし!なんたって唯高の武川さんだもんな!」
「はあ?意味わからねえし。」
「あれ?前田知らなかった?武川さんはインハイ常連の唯高バスケ部のレギュラーなんだよ!」
「……嘘だ。」
小河の思いもしない言葉に思わず否定する。
休日はずっと部屋でダラダラしているし、大学から帰った後もずっとソファーでダラダラしている。
スポーツマンらしからぬ行動ばかりしている真也が、バスケ部、しかもインハイ常連のバスケ部なんて信じられるはずがない。
「嘘じゃねえって。てか、それより俺を武川さんに紹介してよ。俺も一緒にご飯食べに行きたい!バスケについて熱く語りたい!」
そういえばこいつも元バスケ部って言っていたな、と朧気に思う。
バスケ部辞めて不良になって俺以上に血の気が多く先輩大人関係なく喧嘩ばっかりしているこいつが真也なんかに敬語つかって、尊敬していて。
俺の知らない真也の話に苛立ちを感じた。
……
(真也視点)
「ただいまー。れーんー、今日のご飯なにー?」
帰り着くや否やご飯を尋ねるのが日課になってきた今日この頃。
いつもなら、うぜーと言いながら顔を出す蓮の反応がなかったからあれ、と思いながらキッチンへと向かう。
「れーん。」
思った通り、キッチンに蓮はいたものの聞こえている筈の俺の声に反応がない。
今日の朝まで普段通りだったから頭を傾げながら後ろから抱きついた。
「蓮。今日はどうしたの?」
「……」
「れーん。」
ご機嫌ななめらしい蓮の原因はどうやら俺らしい。
ギロッと睨まれた。
流石は不良というか、イケメンというか、眼光に力があるから睨まれると迫力がある。
しかしそんなことでめげる俺ではなく、れーん、と何回も話しかけていると、観念したように蓮は口を開いた。
「バスケ。」
「ん?」
「バスケ部で強かったんだろ。」
「強豪校だったからねえ。」
「レギュラーって聞いた。」
「……?うん、そうだったよ。」
「……知らなかった。」
そう言って黙りこんだ蓮。
……えーっと、蓮がご機嫌ななめなのは、俺がバスケ部だったこと黙ってたから拗ねてたってことでいいのかな。
黙ってたと言うより、単に言う機会がなかっただけなんだけど、そんなことで拗ねていたなんて蓮、可愛すぎる。
可愛すぎて言葉にできなくて固まっていた俺に、居たたまれなくなったらしい蓮。
「毎日ダラダラしている真也にバスケ部って似合わねーって思っただけだからなっ!」
「えー、じゃあ何だったら似合う?」
「ニート」
「えー!そんな毎日ダラダラはしてない!家にいるときだけ!」
「毎日じゃねえか。」
そう、軽口をたたく蓮の機嫌はどうやら直ったみたいだ。
可愛い拗ねかたをした蓮に、夕飯を食べながら自分のことを教えるよと言えば「うぜー」といつも通りの返事が返ってきた。
ですよねー、と夕飯食べながら別の話してると、蓮が拗ねたように「お前の話じゃねえよかよ」なんて言うものだからますます破顔したのは言うまでもないこと。
おわり
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