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第9話

「東!おはよー!」 渋谷が昇降口で駆け寄ってきた。 「おー。渋谷。今日は珍しく、一人なんだ。」 「うん。上條、熱出しちゃって……」 心配そうな顔をする渋谷。 「じゃ、看病してやらないとな?」 「看病って?」 「お粥作って食べさせてあげたり、体拭いてあげたり?」 何を想像してるのか、渋谷の顔が真っ赤に染まる。おいおい。流石に病人相手に……看病だけにしとけよ。 「そういえば、好きな人と上手くいった?」 とぼけて聞いてみる。 渋谷は少し驚いた顔をしてから、コクリと頷いた。 「あの時は相談に乗ってくれてありがとう。ゆ……勇気を出して、返事したら……凄く喜んでくれて……つ、つ……付き合う事になった!」 「…………そっか!良かったな。」 そんな気はしてたけど、ホッとした。 上條、おめでとう。ようやく渋谷を手に入れたんだな。大事にしてやってくれ。ライバルは多そうだけど、ヤキモチは程々に頑張れよ。 心の中で密かにエールを送る。 「東くん!聞いて! 上條くんと渋谷くんがピッタリくっついて内緒話してたの!そしたらね、渋谷くんが少し赤くなって、それを見て上條くんも照れてて……もー!!可愛すぎる!! 初々しくて理想の付き合い始めカップル!」 今日も里奈ちゃんの弾丸トーク。 付き合いは順調らしく、相変わらず、甘々でラブラブな二人。ところ構わず、イチャイチャしてて、いつ誰にバレるのでは……と心配になる位。 今日も二人はくっついて幸せそうに笑い合ってる。 本当に良かったな。お父さんは嬉しいよ。 …………なんて思ってみたりして。 ………………俺だけが知ってる二人の恋の話。 (END)

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