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Please say no:お揃いの懐中時計(オマケシナ)2
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規則正しい寝息が、僕の肌を撫でる。目覚めたばかりだというのに、やけにそれが心地よくて。その雰囲気がもう一度眠りの世界へと、誘おうとしていた。気だるさも手伝ってはいるが、顔も身体も動かせない――逃がさないように抱え込んでいる、キサラギの腕が絡まっているせいだ。
顔にかかっている癖の強い黒髪が、ちょっとだけくすぐったいのに、避けることすら出来ないなんて。
だけど――
「嬉しい束縛、だな」
キサラギの右頬に、自分の左頬を擦りつけた。
伝わってくる柔らかさや、温かみがとても嬉しい。ずっと傍にいられなかったからこそ、尚更なんだが。
動かせるのは、正直ここまで。無理にどこか動かそうと思えば、動かせることは出来る。だが首から下がその――ふたりとも裸なので恥ずかしくて容易に、動かすことが出来ないのだ。
「執務室からここまで、キサラギが運んでくれたんだろうけど、その後ひとりで、どうやって過ごしたのか」
散々僕を弄り倒したのに、キサラギ自身は何ひとつ、そのような行為をしてはいない。今にして思えばそれが何だか、寂しく思えてしまう。
「もっとツバキのことを、考えてあげなければいけなかったよな」
今回はすべてが初めてづくしで、それを受けるのに必死すぎた。キサラギが容赦なく、僕を責めたせいでもあるんだが――
「いきなり、いっぺんにアレコレ、やり過ぎなんだよ……」
次、ヤったら、その次は――って、もうどれだけ引き出しがあるのかと、呆れてしまったくらい。
「大変申し訳ありませんでした、マイプリンス」
その声にぎょっとして、思わず身体が跳ねてしまった。済まなそうな表情を浮かべ、こちらを伺っている黒真珠の瞳が、微妙に揺れていた。
「エドワード様が思っていた以上にエロ……じゃなかった、求めてくださったので、つい頑張ってしまいまして」
「だだだって////、ツバキが感じることばかりしてくるから、その、応えなきゃと思ってだな!」
……キサラギに、エロいヤツって思われちゃった――
「ええ、だから嬉しかったですよ。エドワード様の感じているお姿を拝見できて、私も感じてしまいました」
ちゅっとこめかみに、キスを落とす。
「だけど僕ひとりだけ、あんなに乱れて、何か寂しかったんだけど」
本音をぽつりと漏らしてみたら、右手首を掴まれた。
「では今度はエドワード様が、私を乱してくれますか?」
「えっ――!?」
掴んだ右手首を、ゆっくり布団の中に入れ、キサラギの下半身部分に導いていく。僕の手がキサラギ自身を、乱すことが出来るのだろうか?
ちょっとだけ指先に、ソレが触れた瞬間、身体がカーッと熱くなった。何もしていないのに、キサラギってば、もう……
「あ、あわわっ////」
触るのが躊躇われ、ぎゅっと拳を作ってしまった。
「ほんなごと、照れ屋しゃんやね、エドワード様は」
何故か博多弁で言うと、僕の右手をパッと解放してくれる。
「あーた様んじぇんぶが、可愛くて、しょんなかとよ」
耳元で甘く告げると、ぎゅっと身体を抱きしめてきた。キサラギの肌から伝わってくる熱が、更に僕をドキドキさせる。
ドキドキしているのに安心感もあって、嬉しくて首に腕をそっと回した。
――もっとお前の傍にいたいんだ。
「ツバキ……」
「ゆっくりでいいですから。エドワード様が私のことを、全部求めて戴けるまで、待ちますから。だから――」
啄ばむようなキスを、何度もしてくれる。くすぐったくて、思わず肩をすくめてしまった。
「貴方様の愛を、私だけに戴けませんか?」
真剣な眼差しに、笑顔で答えてやる。
「僕に、Noと言わせたいのかツバキ」
「言わせないよう、私に夢中になって戴く為に、アレコレ手を尽くして差し上げましょうか」
「そんな、手の込んだものは不要だ。既にお前に、首ったけなのだから」
腕に力を入れてキサラギを引き寄せ、愛を注ぎ込んでやるべく、しっとりと唇を合わせた――
「マイプリンス……」
「愛しているぞツバキ。僕の愛の全てを、お前にくれてやる」
かなり照れてしまったけど、しっかりと想いを言葉に乗せて伝えてみた。
「ゆっくり進めようかと計画しておりましたが、そのお言葉で、前言撤回させて戴きます。私は迷わず今すぐに、貴方様を奪いたい――」
掠れた声で熱く告げると、僕の身体のあちこちに椿の花を咲かせて、キサラギの想いを、痕として残し――初めてひとつになることで、お互いがひとつに溶け合った夜にもなった。
キサラギが……ツバキが傍にいれば、もう何も迷うことなどない――庭にある黒椿と水色の薔薇のように、寄り添って生きていく。
Happy End
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