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第10話
「京一さん」
純の呼びかけにパソコンに向かっていた京一が顔を上げる。
眼鏡の向こうにある瞳が大きくなった。
「どう、したんだ」
いつもは冷静沈着な夫の珍しく戸惑っている様子に純は悪戯っぽくふふ…と微笑む。
「たまにはいいかな、と思って。…変?」
わざとはだけさせたガウンの下を見せつけるようにして京一を見下ろす。
ガウンの下は素肌にストッキングのみという格好だった。
ストッキングはブラックの薄いデニールで、当然その下に下着はつけていない。
肌色が透けた下半身は酷く卑猥で、自分で見ていても背徳的でいやらしく見えた。
そんな純の痴態を目の当たりにして、京一の男らしい喉元が上下に動く。
「いや、凄くいいよ、凄く…」
京一が色っぽく呟きながら瞳を細めた。
むわりと立ち込める性の匂い。
そして雄へと変貌していく夫の表情に、純は背中を粟立たせる。
パソコンを閉じた京一がゆっくりとした所作で立ち上がり、純の目の前に立った。
「最近、忙しくてシてなかったな」
長い髪を指先で弄ばれながら囁かれる。
「仕事が忙しいんだから仕方ないよ。それより…」
肩から滑ったガウンが床に落ちる。
照明を落とした部屋に純の蠱惑的な姿が浮かび上がった。
「いっぱい愛して」
純は唇を舐めると京一に強請った。
すぐに背後にあるベッドの上に落し倒されると、京一が首筋に吸い付いてくる。
まるで色事を初めて経験する少年のように息を荒々しくさせて。
純はそっと微笑むと、性急な手つきで身体を弄ってくる京一の背中に手を回した。
隣人の夫を思い浮かべながら。
end.
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